今日も元気に女子野球!

2016年02月17日

突然ですが、明日から香港に行ってきます!

サイン会集合


明後日19〜22日まで、香港で女子野球大会「フェニックスカップ2016 ウィメンズベースボールトーナメント」が行われ、現地に取材に行くことにしました。全12チームによるトーナメント大会で、日本からは毎年出場しているファーイースト・ブルマーズに加えて、ヴィーナス・リーグ選抜のヴィーナス・スターズが出場します。

ヴィーナス・スターズには、昨年のW杯に出場した7選手をはじめとして、全19選手が参加。彼女たちの戦いをこの目で見てこようと思っています。チームを率いるのは平成国際大学・濱本光治監督。したがって、同大学の選手を中心にチーム構成されています。

世界レベルのチームは日本とオーストラリアのみなので、今夏、韓国で行われる「W杯の前哨戦」と呼ぶことはできないけれど、オールアマが海外でどんな戦いを見せるのか、期待したいと思います。

個人的に注目したいのは、韓国、中国、台湾に加えて、グアム、シンガポールチームが出場することです。両チームとも、僕は見たことがないので楽しみにしています。

笹沼菜奈(平成国際大学)☆
小出加会(平成国際大学)
黒崎夏奈(侍)
石黒美和子(新波)
吉井萌美(平成国際大学)☆
石川優希(侍)
船越千紘(平成国際大学)
小貫愛澄(日本大学)
中園美夢(新波)
有坂友里香(アサヒトラスト)
佐藤ほのか(日本大学)
兼子沙希(侍)☆
原万裕(侍)
六角彩子(侍)☆
石田悠紀子(新波)☆
志村亜貴子(アサヒトラスト)☆
新宮有依(侍)☆
御山真悠(平成国際大学)
松川史織(新波)

☆=マドンナジャパン




shozf5 at 17:31|Permalink

2015年11月12日

ときは流れる。季節は巡る――台湾・天母棒球場

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プレミア12をテレビ観戦。昨日のメキシコ戦は台北の天母棒球場で行われた。中田翔の大活躍、メキシコの粘り強さなど試合も面白かったのだけれど、どうしても両軍ベンチ、観客席、スコアボードなど、球場設備が気になって仕方なかった。

2006年の夏、僕はこの球場に10日間通い続けた。「第2回女子野球ワールドカップ」が行われていたからだ。僕にとっては初めての女子野球国際大会取材。前年に初めての「女子野球本」を出したばかりで、選手との関係も今よりもずっと希薄ではあったけれど、某スポーツ誌の依頼を受けて、台湾へと旅立った。

結局、この大会で日本はアメリカに敗れて準優勝に終わる。決勝戦は0対10から10対10に追いつくものの、11対13で敗れ去った。その後もずっと女子野球取材を続けているけれども、この一戦は僕にとって「生涯忘れられない試合」となった。

この試合で印象的だったのが二番手に登板した中島梨紗だった。大会全6試合中5試合に登板。他の投手陣が満身創痍だったこともあって、この大会での中島は身をちぎるようにして投げ続けた。その鬼気迫る姿は見る者に畏怖の念を抱かせるに十分なものだった。

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……第1回プレミア12を見ていて、9年前の夏の光景がありありと浮かんできた。今日のドミニカ共和国戦からは桃園球場に戦いの舞台が移る。予定では今後、今大会では天母での試合は行われない。

あの夏の中島梨紗の奮闘を、僕は決して忘れないだろう。その彼女も、今季限りでの現役引退を決めた。ときは流れる。季節は巡る。


shozf5 at 11:12|Permalink

2015年07月09日

最新刊『マドンナジャパン 絆でつかんだ四連覇』新発売!


女子野球本としては2年半ぶりの新作となる『マドンナジャパン 絆でつかんだ四連覇』(亜紀書房)が、7月24日頃から発売されます。

詳細は改めてご報告します。どうぞよろしくお願いいたします!


shozf5 at 12:08|Permalink

2015年02月21日

『マドンナジャパン光のつかみ方2』発売決定!

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2012年のカナダ・エドモントン大会の舞台裏をまとめた『マドンナジャパン光のつかみ方』発売から2年。この間に侍ジャパン女子代表・マドンナジャパンは2014年の第6回女子野球ワールドカップ日本・宮崎大会も制覇してV4を達成。

そして今夏、ついに『マドンナジャパン光のつかみ方』の第二弾、『マドンナジャパン絆が生んだ4連覇』(仮)の発売が決定しました!

正直なことを言えば、「前作で書きたいことは書いたから、今回は出版は難しいかな?」と弱気になっていたところ、関係各位の多大な後押しを受け、第二弾の発売が決定。みんなの情熱を意気に感じて、胸の奥に眠っていた「書きたい!」という思いが沸々と湧いてきた次第。

そして、この2月。次回作『太平洋・クラウンライオンズ書籍(仮)』執筆の合間を縫って、マドンナジャパン選手たちに会い、じっくりと話を聞き続けた。全20名の選手のうち、すでに半数強のインタビューを終えた。

昨年9月の大会以来、久しぶりに選手たちにじっくりインタビューをした。同じ時期に同じ空間で過ごしながら、それぞれが考えていたことは微妙に異なり、さまざまな想いがそれぞれの胸にしまわれていた。そして、すべての選手が、それぞれの葛藤を抱えていた。

・ファーストミットを使うか、使わないか?
・セットにするか、ワインドアップにするか?
・フォームを変えるか、そのままでいくか?
・投手起用なのか、野手起用なのか?
・話題優先なのか、実力主義なのか?
・プロ入団か、アマのままでいるか?
・現役続行なのか、引退なのか?


なかには、「代表になりたくなかった」と発言した選手もいた。あるいは「美人すぎる野球選手」と話題になった選手もいた。外からはうかがい知ることのできない、彼女たちの内面を再び描こうと、現在、残りの取材も続行中。前作『マドンナジャパン光のつかみ方』の続編としての位置付けで、前作で紹介した選手たちの「あれから2年」を中心に、新たに加わった選手たちの物語を描いていくつもりです。

発売は7月中旬予定。どうぞご期待ください。引き続き、よろしくお願いいたします!




shozf5 at 12:04|Permalink

2014年05月13日

「美人すぎる野球選手」騒動の中で……

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今回のマドンナジャパン候補選手の中で、
「美人すぎる」とか、「可愛すぎる」とか、
様々な表現で話題になった女子選手がいた。

これらの報道の影響なのだろう、僕のところにも、
「彼女の情報を教えて下さいよ!」と連絡がきた。
でも「よく知りません」と曖昧にして答えなかった。

なぜなら、彼女について知りたがっている内容が、
あまりにも下品で、下らなかったからだ。

騒動の渦中にあった頃、彼女に連絡をした。
やはり、予想通りの事態が起こっているようだった。
インターネット上には適当な噂や悪口が渦巻く。
彼女は小さく笑いながら言った。


「私、ミジンコメンタルなんで、
 かなりへこみました……」



かつて、片岡安祐美、川端友紀が通った道だった。
以前話を聞いたとき、片岡、川端両選手は言った。


「私を通じて女子野球が注目されるならば、
 たとえ、どんな話題でも構いません……」



こうして迎えた侍ジャパン女子代表候補、岡山合宿。
2日間にわたる3試合の強化試合が行われた。
今合宿で初めてプロから6選手が合流。
それぞれが、圧倒的な実力を見せつけた。

そして、2日目の2試合目が終了後、
別室に集められ、代表候補32名が22名にしぼられる。

話題になっていた彼女は、今回は候補から外れた。
彼女に密着していた報道陣は落胆したものの、
それでも、カメラは執拗に彼女を追い続ける。
おそらく「涙のシーン」が欲しかったのだろう。

それまで気丈に振舞っていた彼女だったけれど、
最後の最後で、大粒の涙がこぼれ落ちた。
泣かせるための誘導尋問のように、僕には見えた。
4台のテレビカメラはその姿を撮り逃さない。
こうして、彼女のインタビュー撮影は終わった。

僕はその様子を遠巻きに見ていたけど、
彼女が近づいてきたので、声をかけた。


「大変だったね、ミジンコメンタルは強くなった?」


精一杯の笑顔で彼女は言う。


「ハイ。ミジンコよりはましになったと思います!」


そして、このときも以前と同じことを口にする。


「それでも、女子野球が少しでも注目されるなら、
 いろいろあったけど、いいことだと思います」



これもまた、片岡、川端選手から聞いた内容と、
まったく同じ言葉だった。僕は大げさではなく、
彼女は「日本の宝」だと思っている。
この日の経験を糧にした彼女の2年後に期待する。

今回、彼女は女子野球のために本当に頑張った。
背負わなくていい責任を胸に、本当に奮闘した。

shozf5 at 10:13|Permalink

2013年04月23日

世代を超えた女子球児たちの競演!

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……すっかり、放置ブログとなってしまった(笑)。

この間、7月発売新刊の最終執筆に励み、
某著名人のゴースト本を構成&執筆し、
年末に出版した『マドンナジャパン光のつかみ方』
トークイベントを小西美加、川端友紀選手と開催。
それなりに忙しい日々を過ごしていた。

そして、5月に某局で放送されるテレビドキュメンタリーの
制作のお手伝いをすることになり奔走していた。

60分番組なので、数エピソードが含まれるのだけれど、
その中のひとつに「現役女子プロ野球選手」と、
戦後すぐに勃興した「女子プロ野球選手」たちとの、
「世代を超えたキャッチボール」を一つの柱として企画。

そして、舞台を4月20日、神宮球場に定めた。

この日、女子プロ野球公式戦が行われるため、
戦後の女子球児たちに集まってもらい、
試合前のひととき、キャッチボールに興じてもらおう。
そう考えて、関係各位に協力を仰ぐと、
みんながとても好意的に協力を申し出てくれた。

その一方で、おばあちゃんたちに声をかけてみると、
「ぜひやりたい!」とあっという間に15名が集まることに。

下は66歳、最年長は81歳という超高齢集団(笑)。

当時のユニフォームはもうないけれど、それでも、
思い思いのユニフォームとグラブを持ち寄って、
当日、神宮球場に集まってくれた。

彼女たちはかつて、後楽園球場や神宮球場で
プレイをした経験を持つ人たちばかりだ。
実現すれば、半世紀超ぶりの神宮帰還となる。

体調のご都合などで2名が欠席したものの、
全13名の「戦後女子球児」たちはみな興奮顔。

しかし、この日はあいにくの雨。
試合前に雨脚は激しくなり、18時前には中止が決まった。

それでも、日本女子プロ野球機構(JWBL)は、
このイベント実現に向けて献身的にサポートしてくれた。

結局、神宮球場でキャッチボールをすることはかなわなかった。
しかし、室内練習場脇のブルペンでイベントは決行された。

現役選手たちと戦後女子球児たち。
総勢30名超の新旧野球「少女」たちの競演。
その光景を見ているだけで、胸が詰まった。

簡単な準備運動の後、イベントは始まった。

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時間にして15分ほどだろうか?

(どれぐらい投げられるのだろうか……?)

事前に、そんな不安を抱いていたけれど、
みな10〜15メートルほどの距離を普通に投げている。
ステップを使って、軽快にスローイングしている人もいる。

私服姿では背中が丸まっていた人も心なしかしゃんとしている。
杖をついて現場にやってきた人も、杖なしで身体を動かしている。

現役選手たちからも「お元気ですね!」「ナイスボール!」と、
おばあちゃんたちに激励と賞賛の言葉がかかる。

真っ暗な夜空からは、相変わらず雨が降り続き、
風は4月のものとは思えぬほど冷たかったけれど、
それでも、そこには何とも言えない幸せな空気が充満していた。

※番組については、詳細が決定したらご報告します。

マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子 [単行本(ソフトカバー)]



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2013年01月14日

W杯3連覇への道・最終回【ついに、3連覇達成!】

取材・文/長谷川晶一、写真/報知新聞社
http://www.facebook.com/madonnajapan.hikari

六角好守

日本のマウンドには、ここまで3試合に登板して2勝1セーブと抜群の安定感を誇っている磯崎由加里(尚美学園大学)、アメリカの先発はジェニファー・ハンターが登板。先発の磯崎は、前日と同様スローカーブを多投するものの緊張のためなのか、それとも疲労のせいか、何度もピンチを迎える。

2回表・二死満塁の場面。ここでベンチから新谷博監督(元西武など)がマウンドへ駆け寄った。磯崎はこの回だけで二つの死球を与えていた。

(やばい、代えられるのかな?)

磯崎がそんなことを考えていると、新谷は短く言った。

「打ち取る気がないならやめてくれ」

それが、新谷の第一声だった。この場面を新谷は振り返る。

「ピッチャーの持つ《弱気》というのは、“ストライクが取れない”という怖さから生まれるんです。ピッチャーは誰でもフォアボールが怖い。だからストライクゾーンに投げて、そして打たれる。そうなると、相手バッターではなくストライクゾーンと戦い始めることになる。打たれてもいいんです。でも、“バッターに負けたくない”という闘志がなくなったのなら、僕はもう投げさせません。あの場面でマウンドに上がったのは、“お前は何のためにマウンドにいるの?”ということをもう一度、磯崎に思い出させるためでした」

新谷監督による激励が奏功し、この場面は見事にアメリカの2番打者を三振に切って取った。3番に入った「世界一の強打者」タマラ・ホルムズに打順が回れば、大量失点の可能性があっただけに、この場面を無事に切り抜けられたのは大きかった。

試合が動いたのは3回裏・日本の攻撃。二死走者なしから2番・六角彩子(侍)が振り逃げで出塁。続く三浦伊織(京都アストドリームス)、西朝美(アサヒトラスト)の連打で満塁にすると、ここで5番・川端友紀(京都アストドリームス)の死球で先制。さらに、6番・金由起子(ホーネッツ・レディース)がライト前に2点タイムリーを放って、日本は3点を奪い取る。

金タイムリー

日本の先発・磯崎は自軍の攻撃を見ることなく、ひたすらブルペンでピッチング練習を続けている。「投げれば投げるほど調子がよくなる」という磯崎は、試合途中でもしばしばブルペンに入る。このときもまたブルペンで本番さながらの投球を続けていた。

その後も磯崎の老獪な投球は続いた。

相変わらず走者を出すものの、なかなか得点に結びつかないアメリカ打線。先制した直後の4回表・アメリカの先頭打者にヒットを許したが、すぐにセカンドゴロに打ち取りダブルプレー。5回表も一死からヒットを打たれたものの、後続を断った。特にこの回は「世界一の大砲」として名高い、タマラ・ホルムズを見事に空振り三振に仕留めた。これは、タマラにとって今大会最初にして唯一の三振だった。

「まさに、狙い通り。思い描いていた通りの三振です」

キャッチャーの西が笑えば、磯崎も笑顔で振り返る。

「あの三振は西さんとの思いが完全に一致した三振でした」

盤石の信頼関係が築かれていた日本バッテリーの安定感は抜群だった。また、この日もサードを任された六角彩子の守備は鉄壁だった。どんなに強い当たりでも、どんなに難しいバウンドでも、六角は完璧なプレーでことごとくアウトにしていた。埼玉栄高校の同級生である磯崎のために、六角は鉄壁の守備で磯崎をサポートした。以前、磯崎が行っていたことがある。

「マウンドからサードの六角の姿が見える。それだけで安心できるんです」

6回裏・日本の攻撃が終わり、いよいよ最終回が始まる。マウンドに向かう際に磯崎は「最終回も頑張りましょう」と西に声をかけようとしたが、西が見当たらない。不思議に思っていると、西がダッグアウト裏から現れた。西は笑顔で磯崎に声をかける。

「よし、最終回! 気合い入れていこう!」

実は5回裏・日本の攻撃。ショートゴロを放った西は、一塁にヘッドスライディングをした際に、古傷の左ひざを傷めていた。平然とダッグアウトに戻ったものの、重大な異変が起きていることはすぐにわかった。左ヒザ靱帯を断裂したまま、だましだまし野球を続けてきた西でも、今までにない痛みを感じていたからだった。

西ヘッドスライディング

6回表・アメリカを三者凡退に抑えると、西はすぐにベンチ裏に引っ込んだ。トレーナーには「やばいかも」と短く告げた。ナインを動揺させないためにも、アイシングを施す姿は見られたくなかった。西の胸の内にあったのはただ一つの想いだった。

(この大会でぶっ壊れてもいい。あと1イニングだけ、あと1イニングだけでいいから、何とかもってほしい……)

悲壮な決意を抱いている西の状態を知らない磯崎が最終回のマウンドに上がった。しかし、この回も磯崎はピンチを招いた。プレッシャーのかかる準決勝と決勝に連日先発。前日は7回完投、そしてこの日も6回を無失点に抑えて7回に入っていた。重圧はさらに増し、疲労は極みに達していた。

先頭打者にヒットを許したものの、西がランナーを刺殺。何とかツーアウトまでこぎつけた。西陽の射しこむテラス・フィールドには3塁側日本スタンドから「あと一人」コールが響き渡る。しかし、「このコールを聞いて、勝ちを意識して力んだ」という磯崎は、ここから2番にファースト内野安打、3番にフォアボールを与えて、二死1、2塁としてしまう。この場面で、初回に続き新谷監督がマウンドへと上がった。

(あぁ、今度こそ本当に代えられるんだ……。代わりたくないな……)

ツーアウトになり、ブルペンからすべての投手が引き揚げていたものの、ヒットを打たれるとすぐに中島梨紗(侍)、そして里綾実(福知山成美高コーチ)が再びブルペンへと向かっていた。磯崎は覚悟を決めた。しかし、新谷の言葉は意外なものだった。

「お前ら、一体、何がしたいんだ?」

それが、このときの新谷の第一声だった。磯崎も、西も新谷の教え子だった。

「オレはお前たちに、フォアボールの出し方なんか教えてないぞ」

それは、ぶっきらぼうな性格で「いつも誤解されてばかりいる」と嘆く、新谷なりの精一杯の優しさだった。

「あと一人だ。弱気になるな、思い切っていけ!」

この間、わずか1分足らず。それでも、新谷の言葉によってマウンド上ですべてのプレッシャーを背負っていた磯崎の気持ちは大きくやわらいだ。

――そして。

アメリカの2番・エベレット・ケイトリンの打球は力なくセカンドの中野菜摘(尚美学園大学)の前に転がった。中野は無難にさばき、ファーストの金由起子へと転送。その瞬間、マドンナ・ジャパンの大会三連覇が決まった。

優勝の瞬間

会場となったテラス・フィールドはしばし歓喜の舞台へと変わる。新谷監督から始まり、清水稔コーチ(元三菱重工神戸監督)、志村亜貴子キャプテン(アサヒトラスト)の胴上げが続く。選手たちの瞳は潤んでいる。緊張の糸がぷつりと切れたのか、それまでは平然とプレーをしていたキャッチャーの西は、負傷した左足を引きずりながら涙をぬぐっている。

結局、連投となった磯崎は、アメリカに得点を許さずに7回を一人で投げ抜いた。今大会3勝目、通算防御率は0・33、文句のない投球で最多勝とベストナイン(先発投手)、そして大会MVPに輝いた。大会翌月には35歳になるベテランの金由起子は打点王を獲得

さらにベストナインには、救援投手部門では里綾実が、代表初選出ながら球際に強い攻守で何度もピンチの場面を救った出口彩香(尚美学園大学)はショート、プロから参加した三浦伊織は堅実な守備で外野のベストナインに輝いていた。そして、再三にわたって神がかり的な攻守を連発した六角彩子は最優秀守備選手賞を獲得した。

日本中の注目が同時期に行われていたロンドン・オリンピックに向けられている中、異国の地で懸命に戦った20名のマドンナ・ジャパンたち。世界の舞台で、その強さと華麗さ、凛々しさを存分に見せつけた。目指し続けた「世界最強」の称号は、今、確かに彼女たちの手の中にあった――。(了・文中敬称略)

新谷監督胴上げ


マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子


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2013年01月13日

W杯3連覇への道・その16【そして、決勝が始まる……】

取材・文/長谷川晶一
http://www.facebook.com/madonnajapan.hikari

出口・吉井

準決勝のオーストラリア戦を「エース」磯崎由加里(尚美学園大学)の好投で制したマドンナジャパン。休む間もなく翌19日には決勝・アメリカ戦が行われる。怒涛の9連戦の9日目。疲労が蓄積していないはずはない。宿舎では、トレーナーでもある日本女子野球協会・大倉孝一理事長たちが、懸命に選手たちのケアを行っている。史上初の大会3連覇達成は、手の届くところまできている。あと1試合。この試合に勝てば、すべてが変わる。すべてが終わる。すべてが報われる。

13時50分、宿舎であるアルバータ大学学生寮を出発する。本来は14時出発予定だった。けれども、時間に正確な日本代表選手たちは、自然発生的に10分前には全員集合するようになっていた。大会最終日、こんなところにも日本チームの団結力が表れていた。

14時、試合会場であるテラス・フィールドに到着。グラウンドでは3位決定戦であるオーストラリア対カナダ戦が行われていた。その試合を見ながら、マドンナジャパン戦士たちは思い思いにストレッチを行っている。ある者はイヤホンで音楽を聞きながら、ある者はトレーナーにマッサージを受けながら。

14時30分、試合前のミーティングが行われる。清水稔コーチ(元三菱重工神戸監督)から、スタメンが発表される。その顔触れは前日とまったく同じだった。そう、先発は連投となる磯崎。今大会、抜群の安定感を誇る磯崎が準決勝に続いてマウンドに上がることになった。

1番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
2番・六角彩子(5・侍)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
6番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
7番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
8番・出口彩香(6・尚美学園大学)
9番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
P・磯崎由加里(尚美学園大学)


志村キャプテンあいさつ

スタメン発表後、全メンバーを前に志村キャプテンが一通のメールを読み上げる。その手には、自身の携帯電話が握られている。神妙な面持ちで志村をとり囲む19名の選手たちの表情には、決戦を前にした緊張感と、ここまでの8日間で8試合を戦い抜いてきた疲労感が色濃く滲んでいた。メールの差出人は東京ヤクルトスワローズの宮本慎也だった。快晴のカナダの大空には真っ白な入道雲が浮かんでいる。日の丸のユニフォームに身を包んだ19名のマドンナ・ジャパン戦士は、キャプテンの言葉に静かに耳を傾けていた。

《まずは決勝進出おめでとう!!
アドバイスといっても戦っている人にしかわからないことがあるので偉そうなことは言えませんが……、私が言えることは、ビッグゲームは緊張して当たり前ということ。
私もそうです。緊張していることを自覚して戦って下さい! そうすれば注意度も上がり、頭が真っ白という状態はなくなります。
緊張したらダメではなく、緊張するからこそ、緊張を自覚し、確認作業を行い、いいプレーが出来ると思います。緊張しない人は、そんなこと考えず思いっきりやって下さい!
あと、このメンバーでゲームができるのもこれが最後だと思います。日本代表のプレッシャーの中、みんなで協力してきたことを頭に入れて、体全体で目一杯、表現して下さい! 素晴らしい結果になることを日本から祈っています。サッカーに負けるな、マドンナ・ジャパン!》


志村が読み終えると、選手たちの表情に生気がよみがえる。

「……えっと、最後にちょっといい?」

手にしていた携帯電話をしまうと、志村は言葉をつないだ。宮本からのメールを読み上げた後、志村は自分の言葉で「キャプテンとしての思い」をチームメイトに伝えた。

「今日の試合はこのメンバーでやる最後なんで、最高のメンバーで、最高の瞬間を味わいましょう!」

帰国後、この場面を志村が振り返る。

「以前から、決勝前にはキャプテンとして何かを言いたいと思っていました。“どんなことを伝えようかな”と考えていたときに、宮本さんのメールに“このメンバーで戦うのも最後”と書かれているのを読んで、頭に浮かんだのがあの言葉だったんです。あれは私の本心です。“本当に、このメンバーで優勝したい”という思いから出た言葉です。でも、照れくさかったし、あんまり真面目な硬い雰囲気は自分に似合わないから、“はい、名言出ました!”みたいに、少し冗談っぽくしたんです」

この瞬間こそ、志村流のキャプテンシーの完成形だった。そして、試合開始直前、新谷博監督(元西武など)はブルペンに行き、6人の投手陣に檄を飛ばした。

「今日はどんな結果になるとしても、この6人と西と直井、バッテリー全員で戦おう。この6人は世界最強の投手陣だ。誇りと自信を持っていこう! アメリカ、ナンボのもんやねん!」

ブルペンにいた大倉理事長も磯崎を激励する。

「いいか、イソ。これが最後だ、思う存分投げておいで。いけるところまでいったら、あとは里もいるし、ナカシもいるんだから」

この言葉を聞いて、不覚にも僕も胸が熱くなった。ここまで激闘を続ける磯崎の頑張る姿、来る日も来る日もブルペンで待機し続けていた里綾実(福知山成美高コーチ)、そして「ナカシ」 こと、中島梨紗(侍)の黙々と投げ続ける姿が一気に脳裏にオーバーラップしてきたからだった。

ついに、試合が始まろうとしていた。

バッテリーミーティング


マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子


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2013年01月12日

W杯3連覇への道・その15【準決勝・「エース」磯崎の奮闘!】

取材・文/長谷川晶一
http://www.facebook.com/madonnajapan.hikari

磯崎・西

順当に予選リーグ7試合を6勝1敗で1位通過したマドンナジャパン。現地時間8月18日からは、予選上位4チームによるトーナメント戦がスタート。新谷博監督(元西武など)率いる日本チームは、18日15時から、予選4位のオーストラリアと準決勝を戦う。

大事な一戦を任されたのが、尚美学園大の磯崎由加里。予選3戦目のキューバ戦に先発して5回完封、同じく6戦目のオーストラリア戦にリリーフし2回パーフェクト。今大会、絶好調の21歳、頼れる右腕だ。速いカーブと遅いカーブ、それぞれがカウント球、勝負球となり、ストレートのキレもいい。緩急で勝負できる好投手て若くして、老獪な投球術が自慢だ。

磯崎
注目のスターティング・メンバーは以下のとおり。

1番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
2番・六角彩子(5・侍)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
6番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
7番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
8番・出口彩香(6・尚美学園大学)
9番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
P・磯崎由加里(尚美学園大学)


投手以外は、前夜のカナダ戦と一緒のオーダーだった。

清水コーチと外野陣
試合前には、清水稔コーチ(元三菱重工神戸監督)が外野陣を集め、ミーティングを行っていた。前夜のカナダ戦といい、予選のアメリカ戦、オーストラリア戦といい、外野への飛球が、思いのほか伸びることへの注意だった。このミーティングで、この試合では長打ケアを優先することが確認された。

さて、磯崎は、この日も絶好調だった。初回を三者凡退に抑える上々の滑り出し。ただ、少し気になったこともあった。この日の僕の取材ノートには「スローカーブ多投気味」と走り書きが残されている。

しかし、オーストラリア打線は磯崎のカーブにまったくタイミングが合わない。3回に1点を失うものの、走者を出しながらも、要所を締めて、付け入る隙を与えない。一方の日本打線は、先制を許したものの、3回裏に相手のエラーで同点に追いつき、1番・中野の、この日2安打目となるセンター前、3番・三浦のセンターオーバーツーベースで、合計3点を挙げて、一気に逆転。試合を優勢に進める。

さらに、その後も日本チームは加点し、5対1で勝利する。

試合終了直後、磯崎・西のバッテリーに話を聞いた。聞きたかったのは、「スローカーブの多投について」だった。

磯崎・西
開口一番、捕手の西は言う。

「意識としては、カーブ8割、ストレート2割のつもりでした」

その比率に驚いていると、西がさらに補足する。

「磯崎のカーブは、わかっていても打てないんです。私が普段、イソと対戦するときも、そうなんです。たとえ4球続けられても、まったく打てない(笑)」

この「8対2」の割合で、前半は行けるところまで行き、タイミングが合い始めたところから、パターンを変える。それが、磯崎・西のバッテリーと新谷監督の作戦だった。

さらに、西の頭にあったのは、

(もし自分なら、どんな配球がイヤか?)

という思いだった。今大会、すでに3つも敬遠されている世界的強打者の西選手の「打者としての視点」が、磯崎の、さらなる長所を引き出したといえるのかもしれない。こうして、オーストラリア打線は最後まで磯崎投手のカーブをとらえることはできず、手も足も出ないまま敗れ去った。

代表歴は今回が二度目。21歳の磯崎は、紛れもなく今大会のエースだった。新谷監督が「代表投手陣の中で最も、相手バッターを見ることができる」と絶賛し、「相手バッターの嫌がるピッチングができる」と信頼する投手。それが磯崎だった。

試合後ミーティング
試合後、新谷監督は「いいゲームだったね」と振り返りつつも、「すべては明日!」と、さらに気を引き締める。

そして、この試合の後、カナダ対アメリカ戦が行われ、この試合の結果、19日の決勝戦は日本対アメリカに決定。予選リーグで、日本が唯一の敗戦を喫している相手だけに、ぜひここでリベンジを果たし、初の三連覇を実現させたいところ。

……さぁ、泣いても笑ってもあと1試合。運命の一戦となる決勝戦。はたして先発は誰になるのか? 新谷監督の腹は決まっていた。そう、最も頼りになる「エース」を起用することをすでに決めていた……。

マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
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2013年01月07日

W杯3連覇への道・その14【第7戦・薄氷の勝利も予選1位通過!】

取材・文/長谷川晶一

カナダ・エドモントン、現地時間17日19時半。第5回女子野球ワールドカップ大会8日目。予選リーグ最終戦となるカナダ戦が行われた。ここまで、カナダは6戦6勝、対する日本は6戦して5勝1敗。この試合前にアメリカがベネズエラに敗れ5勝に終わったため、このカナダ戦に日本が勝利すれば、ともに6勝1敗で並び、当該国間の勝敗により、日本の1位通過が決定する。

すでに予選通過を決めているとはいえ、1位通過すれば、準決勝は4位のオーストラリアと、2位通過ならば、準決勝は3位のアメリカと戦うことに。予選リーグでアメリカに敗れている日本としては、ぜひとも1位通過を果たして、オーストラリアに勝ち、アメリカとカナダの潰し合いを待ちたいところ。

出口・中野
大事なこの試合、先発はアメリカ戦以来となる新宮有依(平成国際大学)。

新宮・カナダ国旗
日本屈指の速球派右腕に期待がかかる。予選2戦目のアメリカ戦、そして予選最終戦のカナダ戦、強豪国相手にいずれも新宮は先発マウンドを託されていた。監督からの信頼は絶大だった。注目のスターティング・メンバーは以下の通り。

1番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
2番・六角彩子(5・侍)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
6番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
7番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
8番・出口彩香(6・尚美学園大学)
9番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
P・新宮有依(平成国際大学)

金曜の夜ということもあって、テラス・フィールドには今大会で最も多くの観客が。後の発表では、この日の観衆は5100名だったという。もちろん、その大半は地元・カナダの応援ばかりだ。久々に本格的なアウェイ状態の中で、日本はどう戦うのだろうか?

定刻より2分遅れて、19時32分、試合が始まる。

前回のアメリカ戦同様、ブルペンでは絶好調だった新宮。しかし、立ち上がりからカナダ打線につかまる。先頭打者にツーベース、2番にライトへ運ばれ、いきなりのピンチ。3番を三振に斬ったものの、4番のファーストゴロで1点を失う。

大会終了後、新宮がこの場面を振り返った。

「今回は、それまで自信を持っていたインコースのストレートを狙い打ちされました。カナダの先頭打者にもいきなりツーベースを打たれて、自分のリズムをつかむことができませんでした。前回は通用したボールが通用しなかったので、“一体、どこに投げたらいいんだろう?”という思いがあって、そういうボールはやっぱり打たれました……」

この回は何とか1点で切り抜けた新宮だったが、アウトになった打球も当たりの鋭いものばかりで、カナダ打線にとらえられていたのは間違いなかった。それでも、世界有数の超強力打線を誇る日本打線は、1回裏、4番・西の2点タイムリー、2回裏には2番・六角、3番・三浦のタイムリーで追加点。

そして、3回には出口のスクイズで、さらに1点。とどめは4回、二死満塁から金の走者一掃ツーベース。中村のセーフティースクイズと、怒涛の攻撃で9得点。4回を終えて、得点は9対1。試合を決めたかに見えた……。

日本ベンチ
それまで慌しかったブルペンも、ようやく落ち着き、明日以降を見据えた調整の場となっていた。

しかし――。

野球とは、目に見えない「流れ」というものを、いかに自軍に引き寄せるかというスポーツ。日本が手にしていたと思えた「流れ」は、知らず知らず、カナダへと傾いていく。ワイルドピッチがからんで2点を失った5回裏。失点を喫した後の大事な5回に日本は三者凡退。続く6回も、いい当たりを放つものの三者凡退。それでも得点は9対3で、最終回を迎える。この時点で、マウンドには吉井萌美(平成国際大学)。新宮、吉井の平成国際大学コンビの継投で、勝利はもう目の前まで来ていた。ブルペンでは、もう誰も投げていない。中島梨紗(侍)はすでに明日に備え、アイシングをしている。

しかし、ここからカナダの怒涛の攻撃が始まる。吉井が連打を許しピンチを迎えると、ここまで2勝の小西美加(大阪ブレイビーハニーズ)にスイッチするものの、小西もカナダの勢いをとめられず、大慌てで、今大会絶好調の里綾実(福知山成美高コーチ)に交代。すでにクールダウンしていた中島は、右肩の氷袋を外し、ブルペンでの投げ込みを始める。

得点は9対7。一死満塁の大ピンチ。長打が出れば、逆転というケース。しかし、ここで里は何とか踏ん張り、ダブルプレーで、日本は薄氷の勝利を収めた。

試合後整列
試合後、新谷博監督(元西武など)は満面の笑みで「疲れた……」とひと言。しかし、その後すぐに表情が引き締まり、

「油断があったとはいわないけど、あそこまでカナダが粘るとは。継投に関しても、常に万全を期さないといけないな。明日からは負けられない戦いが続く。全力で勝ちに行きますよ」

新谷監督

試合終了時点で、すでに22時を回っていた。監督にとっても、選手にとっても長い一日は、こうして終わった。

……さぁ、現地時間18日15時からは準決勝・オーストラリア戦。予選で10対0でコールド勝ちした相手とはいえ油断は禁物。監督の言葉にあるように、全力で勝利を目指してほしいもの。

1位・日本          7試合6勝1敗
2位・カナダ         7試合6勝1敗
3位・アメリカ        7試合5勝2敗
4位・オーストラリア     7試合4勝3敗
5位・チャイニーズ・タイペイ 7試合3勝4敗
6位・ベネズエラ       7試合3勝4敗
7位・キューバ        7試合1勝6敗
8位・オランダ        7試合0勝7敗
(現地時間17日終了時点)

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2013年01月06日

W杯3連覇への道・その13【第6戦・オーストラリアに完勝!】

取材・文/長谷川晶一

六角・海外メディアからの取材


現地時間16日・15時。第5回女子野球ワールドカップ、大会7日目。日本対オーストラリア戦が行われた。ここまで、5試合を戦い、4勝1敗の日本と、3勝2敗のオーストラリア。

この日の試合前、日本女子野球協会・長谷川一雄会長から「世界の王さん」から届いたメールの文面が披露された。

「厳しい条件なのは、どこも同じ。一戦、一戦を大切に戦ってください」

この日、台湾がアメリカに破れたために、この試合に勝てば、日本の4位以上が確定。ベスト4に進出し、決勝リーグへと駒を進められる。この日の先発は、かつてオーストラリアリーグに所属し、プレーをしていた経験を持つ中島梨紗(侍)

中島 ・試合前
相手の先発メンバー10名のうち8名は、かつてのチームメイトや対戦相手だったという。前日には、ノートとペンを片手にオーストラリアの試合を視察した中島。互いに手の内を知り尽くしている戦いは、はたして有利に働くのか、それとも……。

この日の、スターティングメンバーは、

1番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
2番・出口彩香(6・尚美学園大学)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
5番・六角彩子(5・侍)
6番・直井友紀(2・侍)
7番・大山唯(3・尚美学園大学)
8番・萱野未久(7・シリウス)
9番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
P・中島梨紗(侍)


キューバ戦で、打球を左目に当てて負傷退場した萱野も、この日から無事にスタメン復帰。また、代表初選出で初スタメンとなる直井が先発マスクをかぶることとなった。

そして、試合が始まる。

中島は初回、先頭打者にヒットを許すものの、見事な牽制球でアウトにする。しかし、3番打者にフォアボールを出すものの、この場面は4番をサードゴロに仕留め、ベテランらしいまずまずの立ち上がりを見せた。

一方、先制点の欲しい日本は、1回裏にいきなりチャンスが訪れる。

1番・中野、2番・出口の連続フォアボールでチャンスを作ると、3番・三浦が投手前にバントを決め、これを相手投手が暴投する好きに1点を奪取。続くバッターは、今大会初の4番を任された女子プロ球界最大の看板スター・川端友紀。

川端
打席に入る前に、新谷博監督(元西武など)は、川端を呼び寄せ、何事かを耳打ちする。そして、川端選手はきれいに流し打ちをして、レフト前にタイムリーヒットを放つ。試合後、この場面について話を聞いた。

「監督からは、“ベースギリギリに立って、アウトコースを狙え”って、言われました。監督の指示通りに打つことができてよかったです!」

監督の指示通りに忠実にプレーができる川端。プロの世界で毎年活躍し続けているのも納得だ。その後、中島は徐々に調子を上げていき、4回を無失点。後続を磯崎由加里(尚美学園大学)に託す。

磯崎
13日のキューバ戦で完封した磯崎はこの日も絶好調。5回、6回を打者6人でパーフェクトに抑えた。こうして、日本代表は10対0でオーストラリアを退け、見事に決勝リーグ進出を決めた。さぁ、これで怒涛の9連戦も6試合を消化。泣いても笑っても、残り3試合だ。

翌17日に行われる予選最終戦は、全勝のホスト国・カナダとのナイトゲーム。カナダに5対0で勝利すれば、予選1位通過となる。1位通過すれば、4位・オーストラリアとの対戦。2位通過となれば、3位・アメリカとの対戦。当然、1位通過を狙いアメリカとの対戦は避けたいところ。

1位・カナダ         6試合6勝0敗
2位・日本          6試合5勝1敗
3位・アメリカ        6試合5勝1敗
4位・オーストラリア     6試合3勝3敗
5位・チャイニーズ・タイペイ 6試合3勝3敗
6位・ベネズエラ       6試合2勝4敗
7位・キューバ        6試合0勝6敗
8位・オランダ        6試合0勝6敗
(現地時間16日終了時点)



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2013年01月04日

W杯3連覇への道・その12【第5戦・ベネズエラに完勝!】

取材・文/長谷川晶一

新谷監督・試合後ミーティング
カナダ・エドモントン、現地時間15日10時。第5回女子野球ワールドカップ、大会6日目・ベネズエラ対日本戦が行われた。ここまで日本は4戦を行い、3勝1敗。第2戦のアメリカに敗れたものの、まずまずの成績。予選突破を確実なものにするためにも、この日のベネズエラ戦は、何としてもモノにしたいところ。

注目の先発は、10年に行われた前回大会第4回W杯で、開催国・ベネズエラ相手に好投した里綾実(福知山成美高コーチ)。大きく曲がるスライダーと、打者の手元でキュッと変化する小さなスライダーが武器の好投手。

里
この日の、スターティングメンバーは、

1番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
2番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(6・京都アストドリームス)
6番・六角彩子(5・侍)
7番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
8番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
9番・田中幸夏(DH・兵庫スイングスマイリーズ)
P・里綾実(福知山成美高コーチ)


第3戦のキューバ戦以降、三浦、西、川端の超強力クリーンアップで臨む。

カナダの夏空
この日は、前日の大荒れだった天候が一転し、肌を焼くような強い日差しの中での戦いとなった。期待の里は、堂々たるピッチングを見せてくれた。初回を三者凡退に斬ってとると、2回にヒットを許したものの、3回から6回まで三者凡退、凡打の山を築く。ストレートはスピードがあり、変化球のキレはよく、ベネズエラ打線は面白いように空振り、あるいは、内野ゴロ(特にショートゴロ)ばかりだった。

また、この日のアンパイアの判定も最初は不可解なものだった。しかし、前回のアメリカ戦とは違って、広いなりに一定していたので、2回以降は、アンパイアのクセを把握した上で、日本打線は、2ストライク以降くさい球が来た際には、ファールで逃げるという作戦で、2回に金選手の2点タイムリー、5回には中野選手のショート内野安打で加点。試合は3対0で、日本が勝利した。

里・試合直後
試合後の里は、うれしさを隠せない様子で、「まったく疲れていません」と笑顔で語る。

この日の試合後、新谷博監督(元西武など)の言葉で印象的なフレーズがあった。

「中村の先頭打者フォアボール、あったでしょ? ああいうのを待っていたんです」

新谷の言う「中村の先頭打者フォアボール」とは、7回表の場面だった。3対0で日本がリードしていた最終回。先発・里が好投していたとはいえ、少しでも追加点が欲しい場面だった。ここで中村は、粘りを見せて四球を選んだ。確かに、新谷の言う通り、自分を殺してチームのために「何とかしたい」という意思が垣間見える打席だった。少しずつ、チームとしての完成度も高まりつつあることが感じられるシーンだった。

……さぁ、翌16日からは、オーストラリア、カナダと強豪国との戦いが始まる。

1位・カナダ         5試合5勝0敗
2位・日本          5試合4勝1敗
3位・アメリカ        5試合4勝1敗
4位・オーストラリア     5試合3勝2敗
5位・チャイニーズ・タイペイ 5試合3勝2敗
6位・ベネズエラ       5試合1勝4敗
7位・キューバ        5試合0勝5敗
8位・オランダ        5試合0勝5敗
(現地時間15日終了時点)


日本チームの試合終了後、中島梨紗(侍)が、新谷監督、清水稔コーチ(元三菱重工神戸監督)とともに、オーストラリア戦を視察。そう、翌日は投手副キャプテンの中島が、満を持して先発する。はたして、どんな試合となるのか?


……なおこの日、キューバの選手が一人亡命した。一時、宿舎周辺は警察関係者に囲まれていた。まさに国際大会。何が起こるかわからない。

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2013年01月03日

W杯3連覇への道・その11【第4戦、小西美加、雨中の好投!】

取材・文/長谷川晶一

スタメン発表
カナダ・エドモントン、現地時間14日17時半から、第5回女子野球ワールドカップ大会5日目、日本対チャイニーズ・タイペイ(台湾)戦が行われた。当初の予定では15時試合スタートの予定だったが、12時過ぎ、日本チームが宿舎を出たところで、突然の雨。 球場に着く頃には本降りとなっており、第1試合のオーストラリア対ベネズエラ戦は中断していた。

小西・西
この日の先発は、初戦の対オランダ戦で勝ち投手となった、女子プロ野球の大エース・小西美加(大阪ブレイビーハニーズ)。試合再開のめどが立たないまま、黙々とストレッチをしたり、一人でランニングに励んだり、独自の調整を続けていた。その後、一度宿舎に戻り、大会本部からの連絡を待つことに。「いつ始まるのか?」、「順延になるのか?」、何とも不安定な状況の中、「17時、試合スタート」という連絡が入る。

この時点で、すでに試合開始2時間前を切っていた。代表チームは再び、バスに乗り込み球場へ。球場に着くと、小降りの雨の中、あわてて準備に取り掛かる。

試合前整列
こうして始まった、日本にとっての第4戦――。この日の、スターティングメンバーは、

1番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
2番・中野菜摘(6・尚美学園大学)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
6番・六角彩子(5・侍)
7番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
8番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
9番・出口彩香(6・尚美学園大学)
P・小西美加(大阪ブレイビーハニーズ)


この試合、投手にとって、集中力を切らすことなく、かと言って、緩めるところはきちんとリラックスしなければならないという、実に気持ちのコントロールが難しい状況下において、小西投手は、堂々たるたくましいピッチングを披露する。 3回こそ、エラーがらみで1点を失ったものの、味方の大量援護に守られて、11対1、5回コールド勝利。今大会、2勝目をマーク。

小西・試合後
降雨、試合開始時間変更、中断、ぬかるみのマウンド……、度重なる悪条件について、試合終了直後に小西投手に話を聞いた。

「私の場合、ちょっと何かがあるほうがピッチングがいいんです。たとえ不利な状況であっても、“私にとっては好条件”って、思っていました。気持ちのメリハリについては、私ももういい歳なので大丈夫(笑)。(試合開始が)何時になろうと、夜中になろうと、私が先発することには変わらないんだから」

06年夏、台湾で行われた第2回W杯。ここで小西はメンタルの弱さを露呈した。あれから6年、メンタル面の課題を克服した強さに、僕は感動していた。小西の言葉は、さらに続く。

「……それに、これで抑えたらカッコいいじゃないですか」

それは、プロの世界でエースとしてやってきた、この2年半が何であったのかを、改めて感じさせる実に「カッコいい」言葉だった。しかし、第7戦で、小西にさらなる試練が訪れるのだが、それは後述したい。

そして、この日。前日左目に打球を当てて途中退場した萱野未久(シリウス)も無事に練習に参加。

萱野
「もう大丈夫です」と笑う、その目は青アザが生々しいけれども、決勝リーグまでには間に合うという。まずはひと安心。


1位・カナダ         5試合5勝0敗
2位・日本          4試合3勝1敗
3位・アメリカ        4試合3勝1敗
4位・チャイニーズ・タイペイ 5試合3勝2敗
(現地時間14日終了時点)

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2012年12月30日

W杯3連覇への道・その10【第3戦、新谷博の名采配】

取材・文/長谷川晶一

全員集合

カナダ・エドモントン、現地時間13日11時。第5回女子野球ワールドカップ、一次予選第3戦・日本対キューバが行われた。前日のアメリカ戦では、2対5というスコア以上の屈辱的な敗戦を喫しただけに、ここは気分一新を期待したいところ。

この日、前夜の敗戦を受けて、新谷博監督(元西武など)は、早々に動いた。試合前に、新谷は選手を集めて「緊急ミーティング」を行った。それは「謝罪」から始まるものだった。

試合前ミーティング

「昨日のジャッジで、みんなを迷わせてすまなかった。これからはベンチから指示を出すから、もう何も迷わなくていい。フォアボールの後の初球など、“ここは見逃すな”というときには、積極的に打ってほしいし、“ここは粘ってくれ”というときには、何とかファールで頑張ってくれ。なるべく打席で迷わないように、ベンチから指示を出す。スッキリと自信を持って打席に立てるようにするから安心してほしい」

前夜のアンパイアのジャッジに対して選手たちは疑心暗鬼になっていた。このままの状態で大会を進めていくのは、あまりにも危険だった。僕自身も、「早急に対策を講じる必要がある」とは思っていたが、新谷監督は絶妙なタイミングで的確な指示を出した。

磯崎・ブルペン

先発マウンドを託されたのは、尚美学園大の磯崎由加里。カーブ、シュート、スライダーを操る磯崎投手は、埼玉栄高校時代から注目の投手で、スローカーブで打者を翻弄する巧みな投球術が持ち味。前回大会でも、日本三本柱の一角を占めていた。

田中
また、この日はプロから代表入りした田中幸夏(兵庫スイングスマイリーズ)がスタメン起用され、今大会初めての試合出場を果たす。田中は神村学園高校時代の04年、このエドモントンで開催された第1回大会出場経験を持っていた。このときは中心選手として大活躍し、日本の準優勝に大きく貢献した。

「8年前と比べて、球場がきれいになったかな?久しぶりのジャパンなので、頑張ります!」

この日の、スターティングメンバーは、

1番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
2番・六角彩子(5・侍)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
6番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
7番・出口彩香(6・尚美学園大学)
8番・田中幸夏(4・兵庫スイングスマイリーズ)
9番・萱野未久(7・シリウス)
P・磯崎由加里(尚美学園大学)


この日、前日までの2試合から打線を変更する。過去ずっと先頭打者を任されてきた志村が1番に、ポイントゲッターとして期待される三浦を3番に起用。そして、この用兵は見事に的中する。

1回裏の日本の攻撃で、1番・志村が四球で出塁すると、相手チームの守備の乱れに乗じて、無死二、三塁として、3番・三浦が見事にセンター前に2点タイムリーヒット。前日の嫌な雰囲気を一瞬で吹き飛ばした。

三浦・大山
投げては、磯崎投手が緩急自在のピッチングで、キューバ打線を翻弄。決して速球派でもないのに、面白いように打者はタイミングを狂わされ、空振りの山を築く。4回表は三者三振という、実に小気味いい投球を披露した。この試合だけに限らず、磯崎の安定感はいつも抜群だった。あるとき、新谷監督がこんなことを言っていたことがある。

「長谷川さん、イソが打たれたり、ピンチを背負っているイメージってありますか?」

改めて、そう問われてみれば「ありません」としか、答えようがない。常にピッチャー有利のカウントでピンチらしいピンチを見た記憶がない。ミート技術に優れた日本打線 でさえそうなのだから、大振りが目立つ外国打線ではなおさらだ。この試合によって、改めて新谷監督の胸の内には「磯崎は使える」という想いが芽生えたことだろう。

2回表の守備で、レフトの萱野が、打球を左目に当て途中退場というアクシデントもあったが、日本チームは浮き足立つことなく落ち着いていた。(検査の結果、萱野選手に異常はなかった)。結局試合は、終始日本ペースで10対0、5回コールド勝利。文句のない、戦いっぷりだった。

……しかし、マドンナジャパンを率いる新谷博監督は、この勝利を手放しで喜んではいない。

試合終了直後、選手たちをレフト付近に集め、厳しい口調で、緊急ミーティングを始めた。

試合直後ミーティング
これまで、新谷監督に何度も取材を行ってきたが、その口調は今までにない《激しさ》に彩られていた。

「ここにきて、みんなプレーが軽い、オレたちがやっているのは、“明日負けたら、終わり”の戦い。サインミスなんかしてる場合じゃないだろ!ワンプレーごとにいちいち喜ぶな。日本に帰ってから喜べ!」

これも珍しいことだが、このとき新谷監督は、実名を挙げて、名指しで数名の選手を批判する。

「……普段はあまり名前を出さないけど、川端、三浦! オレたちは《今日、負けたら終わり》の試合、やってんだよ。バントミスしました。ごめんなさい。練習して、明日できればいいっていう話じゃないんだ。……そして金。この期に及んでサインミスなんかしている場合じゃないだろ」

決して諭すような口調ではない。新谷の語気は強かった。
選手間に緊張が走る。本人の言う通り、選手を名指しで批判するのは新谷にしては異例のことだった。名指しされた川端、三浦、そして金の表情が、一段と引き締まる。これからしばらくして、監督に「激」の真意を聞いた。

「選手たちに“今のままでは勝てない”と気づいてほしいんです。以前から“日本代表ってそんなに甘いものじゃない”って、口を酸っぱくして言ってきたけど、それが薄れてきたようだから」

そして、最後にこう口にする。

「結局、僕自身が選手たちに遠慮していたのかもしれない。でも、昨日アメリカに負けたことで、僕自身が変われた。代表の重みをもう一度きちんと伝えたかったんです。アメリカに負けたことでそう思えたんです。選手たちに改めて“今のままじゃ勝てないぞ”っていうことに気がついてほしかった。送りバントが成功してガッツポーズが自然と出るような、そんなチームにしたいんです。ひょっとすると、僕の中で選手たちに対する遠慮があったのかもしれない。でも、アメリカに負けたことで、僕自身が吹っ切れました。あの敗戦で、僕自身が“このままじゃ勝てない”と気づいたのかもしれない」

前夜の敗戦を糧にして、また一歩踏み出したマドンナジャパン。後に振り返ってみたときに、間違いなくターニングポイントとなる一瞬。そんな瞬間が、この日の試合前と試合後の二度の緊急ミーティングだったと言えるだろう。この二度のミーティングこそ、大会3連覇を実現した、新谷博の「名采配」だった。

マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
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2012年12月29日

W杯3連覇への道・その9【第2戦、まさかの黒星……】

W杯3連覇への道・その9【第2戦、まさかの黒星……】
取材・文/長谷川晶一


新宮・直井

カナダ・エドモントン、現地時間8月12日19時半。テラスフィールドにて、第5回女子野球ワールドカップ、日本チーム第2戦となる対アメリカ戦が行われた。 前日のオランダ戦に快勝し、いい雰囲気で臨んだ試合だった。試合前には、この日19歳の誕生日を迎えた吉井萌美(平成国際大学)の誕生日を日本人スタンド全員で祝福するなど、実に和やかなムードで臨んでいた。

吉井バースデー

しかし、結論から言えば、この日のアメリカ戦は、2対5で敗れる。それは、「わずか3点差」とは言えない、「完敗」というべき試合内容だった。

前日21点を奪った日本打線はわずか2安打に封じ込まれた。それでも、ゲッツー崩れと犠牲フライで2点を奪えたのは、合計で9四死球と制球の定まらないアメリカ投手陣のおかげとしか言いようがなかった。改めて、試合を振り返りたい。

新宮・ブルペン
この日のスターティングメンバーは、

1番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
2番・六角彩子(5・侍)
3番・川端友紀(6・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
6番・新井純子(DH・尚美学園大学)
7番・大山唯(3・尚美学園大学)
8番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
9番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
P・新宮有依(平成国際大学)


アメリカの練習を見つめる
先発の新宮は、決して内容は悪くなかった。ブルペンでは、すべての球種がコントロールよくキャッチャーのミットに納まっている。埼玉栄高校時代にバッテリーを組んでいた直井友紀(侍)も、試合前には「今日の新宮、なかなかいいですよ!」と上気した顔で語っていた。それでも、新宮はなかなかリズムに乗り切れない。

……それは、なぜか?

選手や協会関係者が言えば「言い訳にすぎない」と非難されるから、決して口にはしないが、この日の主審の判定はひどすぎた。言っても仕方のないことかもしれないが、初回の日本の攻撃から、「アレ?」という不可解な判定が続いた。僕の取材ノートには、2回の時点で、

「主審の判定、揺らぎすぎ」

と書かれている。

とにかく、アメリカに有利に有利に判定されていた。アメリカの打者陣が手が出なかった投球がボールになり、一方で日本の打者陣が「ボール」と思った球がストライクになるため、必然的に「追い込まれる前に打とう」と早打ちになる。カナダ人球審に対して、「最大のライバル国、日本不利に判定しているのでは?」という猜疑心が、ついつい芽生えてくる。

しかし、9四死球をもらいながら、2安打しか打てなかったのも事実。「打線は水モノ」というフレーズが、改めて頭に残る。

スコア

また、アメリカの4番・タマラ・ホームズはこれまでの大会で何度も見てきたが、相変わらず超長距離砲で、この日は三塁打が2本、二塁打が1本。38歳で迎えた今大会でも、その破壊力はまだまだ健在だった。もし決勝、もしくは準決勝で再び対決するときのために、「ホームズ対策」が何としてでも必要だった。後に明らかになるが、このときすでに新谷博監督(元西武など)の中には「タマラ対策」があったという。それは、後に触れたい。

新谷監督・試合後
試合後、新谷監督は言った。

「負けたけれど、別に悲壮感を漂わせても仕方がないんで、切り替えるところは切り替えて、明日のキューバ戦に臨みたい」

アンパイアのジャッジについて尋ねると、一瞬表情を曇らせた後、

「平等だったら構わないんだけど、(アメリカ有利に)ちょっと偏っていたかな……」

と、多くを語らない。

この日の唯一の収穫は、新宮をリリーフした里綾実(福知山成美高校コーチ)中島梨紗(侍)が好投を見せたことだった。里はタマラにスリーベースを打たれるなど1失点を喫したものの、前回大会で各国を切りきり舞いさせたスライダーが今大会も通用することが証明されたし、ベテラン・中島は巧みな投球術で老獪なピッチングを披露した。この2人の活躍が、この日の日本にとっての希望だった。

里

試合終了直後、観客席にいた地元の人が、スタンドから大声で、清水稔コーチ(元三菱重工神戸監督)を呼び止める。

地元ファンからの激励
通訳が駆け寄り、話を聞くと、彼の言い分はこうだ。

「あまりにも日本に不利な判定ばかりで腹が立ったので、主催者に文句を言いに行ったけど、受け入れられなかったよ」

この光景を見て、僕は少しだけ溜飲が下がったものの、負けは負け、結果は変わらない。それに、敗戦の理由を審判のせいにしているだけでは、大会史上初の3連覇は成し遂げられるはずもない。

しかし、日本チームに悔しさはあっても悲壮感はない。帰りのバスで席が隣になった金由起子(ホーネッツ・レディース)と、この日のジャッジの話になった。

「海外ではそういうものにも勝たないといけないんですよ」

確かに、金の言うとおりだった。

これで全勝優勝の可能性はなくなったけれど、決勝リーグに進出して、この借りを返せばいい。22時前に試合が終わり、息つくまもなく、翌13日の11時には第3戦・キューバ戦が待っている。これも、「海外で戦うということ」なのだろう。

9連戦の3戦目、対キューバ戦が、まもなく始まる。チーム内に漂い始めたイヤなムードを払拭するにはどうすればいいのか? しかし、新谷の中には「秘策」があった。それは、翌13日の試合前に披露されることとなった――。

マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
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shozf5 at 11:23|Permalink
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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