2015年12月27日

『Cawaii!』と、作家・中島京子の蒼き日々



昨日発売された、最新刊ギャルと「僕ら」の20年史 女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉』(亜紀書房)では、直木賞作家の中島京子さんから、帯の推薦コメントをいただいた。

私たちは今までどこにも
属さなかった読者を相手に
しているんだなって気づきました


2010年『小さいおうち』で直木賞を受賞する中島京子さんは、雑誌『Cawaii!』の創刊メンバーの一人だ。『Cawaii!』編集部では、僕とはニアミスだったけど、別々の雑誌の編集者として、同時期に同じ会社に在籍していた。


僕が『Cawaii!』編集部に移動した後、創刊編集長と酒を飲んでいたときに、こんなことを言われた。

「長谷川、タヤマカタイって知ってるか?」


突然、何を言うのかと思いながら、僕は答える。

「作家の……、あの『蒲団』の田山花袋ですか?」

読んだことはなかったけれど、受験勉強の記憶をたどりながら答えた。

「そうだ。よく知ってるな。その田山花袋の『蒲団』をアレンジして中島が小説を書いたんだよ」

一足先に会社を辞めた中島さんがアメリカにわたって、帰国後フリーライターになっていることは知っていた。酒場で何度か同席したこともあって、小説家を目指していることも知っていたので、特別驚きはしなかった。

「その小説がかなり面白いんだよ。あれはかなり良くできた作品なんだ」

……そのときは、それで話題が終わった。けれども、あれから二十年近く経つというのに、このときの編集長とのやり取りはハッキリと記憶に残っている。滅多に褒めない編集長が「よく知ってるな」と発言したのが嬉しかったからだろう(笑)。

それから、しばらくして中島さんの作品は『FUTON』と題されて店頭に並んだ



僕はすぐに購入して一気に読んだ。上から目線の発言だけど、見事なデビュー作だと思った。その後、次から次へと話題作を発表し、多くの文学賞を受賞。一気に人気作家の仲間入りを果たした。

そして、2010年。『小さいおうち』が発売されたときにもすぐに買って読んだ。そのときに、「映像化されそうないいお話だな」と感じた。そして、見事に直木賞を獲得。しばらくして、あの山田洋次監督が映画化すると聞き、「当然だよな」と納得したことを覚えている。


今回、『Cawaii!』の物語を執筆するに当たって、どうしても中島さんに当時の思い出を聞きたいと思った。

(ひょっとして、中島さんはあの時代のことを話したくないのかも……)

何だか知らないけれど、勝手にそんな不安を抱きつつ、取材のお願いをするとアッサリと快諾していただけた。駆け出しの後輩に対する気遣いだったのかもしれない。

そして、お話を伺うと、当時の生々しい心境が語られ、卓見も随所に発揮された。特に、「あの雑誌は《郊外》を発見したのだと思う」という発言には、深く納得した。

それまでの既存の女性誌が扱っていた、銀座や青山、代官山ではなく、栃木のコなら上野、飯能のコなら池袋など、都内近郊の読者たちのリアルな情報を拾うことで、『Cawaii!』は草の根的な誌面作りが可能になった。「それが読者たちの共感を得たのでは?」という発言だった。

他にも、「雑誌」という概念の変容について、現在のSNSと『Cawaii!』との関係について……、本書執筆において、参考になる言葉がたくさんあった。

中島さんにお話を聞いてから、発売までに2年もかかってしまった。「長谷川クンは結局書けなかったのかな?」と心配されていただろう。ようやく完成のご連絡をすると、「ご苦労さまでした。楽しみにしています」とねぎらいの言葉をもらった。

このギャルと「僕ら」の20年史では、若き日の中島さんの迷いや葛藤にも触れた。本書は直木賞作家の蒼き日々の奮闘の物語でもあるのだ





shozf5 at 13:12│ 執筆、執筆、執筆…… 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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