2013年01月13日

W杯3連覇への道・その16【そして、決勝が始まる……】

取材・文/長谷川晶一
http://www.facebook.com/madonnajapan.hikari

出口・吉井

準決勝のオーストラリア戦を「エース」磯崎由加里(尚美学園大学)の好投で制したマドンナジャパン。休む間もなく翌19日には決勝・アメリカ戦が行われる。怒涛の9連戦の9日目。疲労が蓄積していないはずはない。宿舎では、トレーナーでもある日本女子野球協会・大倉孝一理事長たちが、懸命に選手たちのケアを行っている。史上初の大会3連覇達成は、手の届くところまできている。あと1試合。この試合に勝てば、すべてが変わる。すべてが終わる。すべてが報われる。

13時50分、宿舎であるアルバータ大学学生寮を出発する。本来は14時出発予定だった。けれども、時間に正確な日本代表選手たちは、自然発生的に10分前には全員集合するようになっていた。大会最終日、こんなところにも日本チームの団結力が表れていた。

14時、試合会場であるテラス・フィールドに到着。グラウンドでは3位決定戦であるオーストラリア対カナダ戦が行われていた。その試合を見ながら、マドンナジャパン戦士たちは思い思いにストレッチを行っている。ある者はイヤホンで音楽を聞きながら、ある者はトレーナーにマッサージを受けながら。

14時30分、試合前のミーティングが行われる。清水稔コーチ(元三菱重工神戸監督)から、スタメンが発表される。その顔触れは前日とまったく同じだった。そう、先発は連投となる磯崎。今大会、抜群の安定感を誇る磯崎が準決勝に続いてマウンドに上がることになった。

1番・中野菜摘(4・尚美学園大学)
2番・六角彩子(5・侍)
3番・三浦伊織(8・京都アストドリームス)
4番・西朝美(2・アサヒトラスト)
5番・川端友紀(DH・京都アストドリームス)
6番・金由起子(3・ホーネッツ・レディース)
7番・中村茜(7・兵庫スイングスマイリーズ)
8番・出口彩香(6・尚美学園大学)
9番・志村亜貴子(9・アサヒトラスト)
P・磯崎由加里(尚美学園大学)


志村キャプテンあいさつ

スタメン発表後、全メンバーを前に志村キャプテンが一通のメールを読み上げる。その手には、自身の携帯電話が握られている。神妙な面持ちで志村をとり囲む19名の選手たちの表情には、決戦を前にした緊張感と、ここまでの8日間で8試合を戦い抜いてきた疲労感が色濃く滲んでいた。メールの差出人は東京ヤクルトスワローズの宮本慎也だった。快晴のカナダの大空には真っ白な入道雲が浮かんでいる。日の丸のユニフォームに身を包んだ19名のマドンナ・ジャパン戦士は、キャプテンの言葉に静かに耳を傾けていた。

《まずは決勝進出おめでとう!!
アドバイスといっても戦っている人にしかわからないことがあるので偉そうなことは言えませんが……、私が言えることは、ビッグゲームは緊張して当たり前ということ。
私もそうです。緊張していることを自覚して戦って下さい! そうすれば注意度も上がり、頭が真っ白という状態はなくなります。
緊張したらダメではなく、緊張するからこそ、緊張を自覚し、確認作業を行い、いいプレーが出来ると思います。緊張しない人は、そんなこと考えず思いっきりやって下さい!
あと、このメンバーでゲームができるのもこれが最後だと思います。日本代表のプレッシャーの中、みんなで協力してきたことを頭に入れて、体全体で目一杯、表現して下さい! 素晴らしい結果になることを日本から祈っています。サッカーに負けるな、マドンナ・ジャパン!》


志村が読み終えると、選手たちの表情に生気がよみがえる。

「……えっと、最後にちょっといい?」

手にしていた携帯電話をしまうと、志村は言葉をつないだ。宮本からのメールを読み上げた後、志村は自分の言葉で「キャプテンとしての思い」をチームメイトに伝えた。

「今日の試合はこのメンバーでやる最後なんで、最高のメンバーで、最高の瞬間を味わいましょう!」

帰国後、この場面を志村が振り返る。

「以前から、決勝前にはキャプテンとして何かを言いたいと思っていました。“どんなことを伝えようかな”と考えていたときに、宮本さんのメールに“このメンバーで戦うのも最後”と書かれているのを読んで、頭に浮かんだのがあの言葉だったんです。あれは私の本心です。“本当に、このメンバーで優勝したい”という思いから出た言葉です。でも、照れくさかったし、あんまり真面目な硬い雰囲気は自分に似合わないから、“はい、名言出ました!”みたいに、少し冗談っぽくしたんです」

この瞬間こそ、志村流のキャプテンシーの完成形だった。そして、試合開始直前、新谷博監督(元西武など)はブルペンに行き、6人の投手陣に檄を飛ばした。

「今日はどんな結果になるとしても、この6人と西と直井、バッテリー全員で戦おう。この6人は世界最強の投手陣だ。誇りと自信を持っていこう! アメリカ、ナンボのもんやねん!」

ブルペンにいた大倉理事長も磯崎を激励する。

「いいか、イソ。これが最後だ、思う存分投げておいで。いけるところまでいったら、あとは里もいるし、ナカシもいるんだから」

この言葉を聞いて、不覚にも僕も胸が熱くなった。ここまで激闘を続ける磯崎の頑張る姿、来る日も来る日もブルペンで待機し続けていた里綾実(福知山成美高コーチ)、そして「ナカシ」 こと、中島梨紗(侍)の黙々と投げ続ける姿が一気に脳裏にオーバーラップしてきたからだった。

ついに、試合が始まろうとしていた。

バッテリーミーティング


マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子
マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子


shozf5 at 10:30│ 今日も元気に女子野球! 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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