2012年12月14日

W杯3連覇への道・その2【日本代表候補対プロ選抜2連戦】

日本代表候補


W杯3連覇への道・その2【日本代表候補対プロ選抜2連戦】
取材・文/長谷川晶一


2012.04.21@わかさスタジアム京都

日本代表の強化試合として組まれた、日本代表候補対プロ選抜2連戦。この2連戦こそ、マドンナジャパン3連覇スタートの日だと僕は思っている。

この日の試合後、当時の取材ノートに、僕はこう書いた。

「アマサイドに慢心、油断があったとは言わない。
けれども、ようやく健全なプロとアマの関係が訪れようとしている」


「これが始まり。ここから3連覇は始まる。
この連敗を無駄にしてはいけない」


プロとアマ――。

男子野球の世界においては、プロリーグこそ国内最高峰だということに異議を唱える者はいないだろう。しかし、女子野球の世界においては事情は異なっていた。2010年に一から始まったプロリーグ・GPBLについて、アマチュア選手の多くは「はたしてレベルはどの程度のものなのだろう?」「はたして信頼に足る組織なのだろうか?」と慎重な態度をとった。

学校を、職場を辞めてまで、一から始まるプロリーグに身を投じるリスクを冒したくない。それこそ、当時のアマチュア選手の中にあった率直な思いだったはずだ。それでも、一部の選手はプロの世界に身を投じた。ゼロからリーグを立ち上げる困難を理解した上で、選手としてだけでなく、リーグ普及の広報活動も含めて、すべてを捧げる覚悟を持ってプロの世界に足を踏み入れることを決意した。

そしてプロリーグ発足から2年間。GPBLの選手たちは見違えるようにレベルアップをしていた。プロにはプロの意地があった。女子野球の世界において「プロよりも、アマの方が上だ」という、世間の目を当然理解していたはずだ。今こそ、その「誤解」を払拭する絶好の機会だった。

川保麻弥


GPBLが発足したことによって、後に代表入りすることになる、ソフトボール出身の川端友紀、テニス出身の三浦伊織という、稀有な才能を発掘することができた。アマチュアサイドの中には、川端、三浦の真の実力を知る者は少なかった。

だからこそ、僕はこの日、川端、三浦が、代表候補の好投手に対して、意地を見せてほしい、もっと言ってしまえば、中島梨紗、新宮有依、磯崎由加里といった好投手を打ち崩してほしい。プロの意地を見せつけてほしい。そんな気持ちも心のどこかにはあった。それによって、中島、新宮、磯崎たちが、さらに上のステージに行けるのではないか。そんな期待も確かにあった。

さらに、個人的に注目していたのが兵庫スイングスマイリーズの岩谷美里だった。日本代表の好投手陣の中にあって、仮にウィークポイントがあるとしたら、僕は「盤石のストッパーがいない」と考えていた。その穴を埋めるとしたら、岩谷が適任ではないか。そう考えていたからだ。

坂本加奈


そして、試合が始まった。

日本代表候補チームは、手も足も出なかった。言い訳のできない完敗だった。プロ選手は開幕一ヵ月後で万全の状態にあった。一方のアマチュア選手はリーグ戦開幕前の調整段階にあった。客観的に言えば、そうした違いは確かにあった。それでも、ここまでの完敗を喫するとは、僕も思っていなかったし、選手たちも、そして何よりも、新谷博監督も思っていなかったことだろう。

第一試合・●1−6
第二試合・●0−9

この試合で、僕が注目していた川端、三浦は文句ない大活躍を見せた。特に三浦は2試合で6安打という、打撃巧者ぶりを存分に見せつけていた。
試合後、新谷監督は言った。

「日本代表メンバーにはいい刺激になったと思います。プロ選手たちは、さすがに毎日練習をやっているだけのことはあると思います」

三浦伊織 (2)


率直に言ってしまえば、新谷の中では女子プロ野球に対する評価は低かった。いや、というよりもGPBLがどんな野球をやっているのか、そこではどんな選手がいるのか、理解していなかったと思う。それが、この日、女子プロ選手たちのパフォーマンスを見て、イメージの上方修正を余儀なくされたはずだ。精一杯、平静を装ってはいたが、内心では驚きと動揺があった。本当に悔しいとき、内心に動揺を抱えているとき、新谷はあえて平静を装う。強気なふりをする。それは、これまでの取材を通じて、僕が感じていたことだった。そして。まさにこのときこそ、新谷の中にある「強がりと動揺と不安」を、僕は感じていた。

同じような光景は、本番の予選第2戦でアメリカに負けたときにも見られたが、それは後に触れることとしたい。
後に、新谷にこの2連戦について確認すると、「確かに、プロのレベルに驚いた」と率直に認めていた。

この連敗を受けて、日本女子野球協会は翌22日、6名のプロ選手を緊急招集する。

・川端友紀、三浦伊織(京都アストドリームス)
・厚ケ瀬美姫、田中幸夏、中村茜(兵庫スイングスマイリーズ)
・小西美加(大阪ブレイビーハニーズ)

後に、故障のために厚ケ瀬が代表辞退するものの、残りの5名は最終メンバーとしてカナダに行くこととなる。こうして、プロ、アマ混成のドリームチームが生まれることとなった、この4月21日という日こそ、W杯3連覇のすべての始まりだった。間違いなく僕はそう思う。

花ヶ崎


小出 (2)


この2連戦では、小出加会(埼玉栄・写真上)と、花ヶ崎衣利(蒲田女子・写真下)の高校生投手がマウンドに上がった。結果的に、両者とも代表メンバー入りすることはできなかったけれど、数年後には代表入りも十分可能な逸材であることは確かだ。





shozf5 at 10:40│ 今日も元気に女子野球! 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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