2012年05月25日

岩手のアオダモを守り続ける男

原会長とアオダモ

ここ数日、東北に行っていた。
青森、岩手、宮城、福島と各県を回り、
以前取材で知り合った方、初めて会う人、
それぞれと楽しい酒をともにした。

岩手県紫波町では忘れられない人と再会した
彼の名は、原修。すでに70代半ばを迎えている。
地元で40年以上、スポーツ店を経営している人物だ。

西武の菊池雄星は、中学生の頃、
この店に顔を出しては何時間も飽きることなく、
グラブやバットを手にして原さんと過ごしたという


「野球バット材・アオダモが枯渇している」
そんな話を聞いた原さんは60歳になる頃に、

「スポーツ店を経営してきた恩返しをしたい」と、
アオダモの植樹に取り組むことを決意した。

アオダモはモクセイ科トネリコ属の落葉樹で、
主に北海道の森林に分散して生育している。
その材質は、固くて粘りがあり、バット材に最適だ。

しかし、バットになるまでには約70年かかり、
現在では、森林開発の影響などで減少。
ここ数年のうちに、枯渇してしまうだろう。

僕はここ10年、アオダモの取材を続けてきた。
2010年には、『イチローのバットがなくなる日』と題して、
現在、アオダモを取り巻く環境について、一冊にまとめた。

イチローのバットがなくなる日―「アオダモ」を巡る渾身のルポルタージュ (主婦の友新書)
イチローのバットがなくなる日―「アオダモ」を巡る渾身のルポルタージュ (主婦の友新書)
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僕が原さんと出会ったのは、本書が出版された後の、
2011年春のことだった。
したがって、本書には原さんのことは触れられていない。

原さんは自費で、北海道からアオダモの苗木を購入し、
行政各所と交渉の末、国有林の使用許可を得て、
現在では、数万本の植樹実績を誇っている

植樹祭では、地元の少年少女球児たちが、
「木のバットがなくなる日がくるとは知らなかった」と、
熱心にスコップ片手に小さなアオダモを植えているのだという。

昨年に引き続き、今年も植樹会場を訪れた。
五月晴れの東北の風は気持ちよかった。

「GWまでは、まだ雪が残っていたんだよ」

すくすく育つアオダモに触れながら、原さんが笑う。

「今まで何度もクマにも出会ったんだよ」

この場所には、孫の名前から一文字をとって、
「光の森」という名前が付けられている。

「孫の名前をつけておけば、私が死んだ後でも、
少しは森のことを気にかけてくれるんじゃないかと思って」


現在、「岩手のアオダモを育てる会」が発足し、
定期的な植樹活動、啓蒙活動を行っている。
原さんをサポートする体制も着々と整っている。

「岩手の野球少年少女たちに、アオダモのバットで、
たくさん野球を楽しんでもらいたい」


少年たちの寄せ書き


名もなきヒーローの名もなき奮闘。
全国には、誇るべき偉人がたくさんいる。







shozf5 at 10:32│ 私は今、旅の途上です 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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