2012年04月09日

再録・2010初夏・宮國椋丞インタビュー

糸満・宮國投手 (2)


ジャイアンツ・宮國椋丞がプロ初勝利を挙げたという。
一日中、こもりきりで原稿を書いていたため、
その雄姿を見ることはできなかったけれど、
入団一年目から期待していただけに、
プロ初登板で初勝利を挙げたのは僕も嬉しい。

旧知のジャイアンツ担当に今日の試合について聞いたら、
彼曰く、

「6回以降は変化球が高めに浮き始めましたが、
それまでは低目を丁寧に突き、
人を食ったようなスローカーブも有効でした。
正直、澤村などよりも内容のあるピッチングでしたね」
とのこと。

ますます、生で見てみたくなった。

2010年初夏、沖縄県予選開始直前のこと。
僕は、沖縄・糸満高で宮國のインタビューをした

手足の長さとスタイルの良さに驚いた記憶がある。
その投球を見て、さらに驚かされた。

上原監督曰く「極度の口下手ですよ」と聞かされ、
いろいろ気を遣いながら話を聞いたのが懐かしい。

彼はどんな受け答えをするようになったのだろう?
プロに入って、変化があったのか、なかったのか?
ぜひ、インタビューをしてみたいものだ。

というわけで、当時書いた原稿を再録したい。
媒体は『ホームラン』(2010・6+7)号

巻頭特集「今ベールを脱ぐ夏の新ヒーロー」の
文字通り巻頭に掲載されたものだ。
この号で、宮國は表紙も飾っている。




遠くからでも、すぐにそれとわかるユニフォーム姿。
長身で手足が長く、その投球フォームは
実に優雅で天性の華がある。

糸満高校のグラウンドに入ってすぐに
目についたのが宮國椋丞だった。身長183臓体重74繊
スマートな体躯から繰り出される伸びのあるストレートは
常時140キロ台を計測しているという。

バッターが思わず腰を引いてしまう高速スライダーも小気味いい。
糸満高校・上原忠監督も宮國の実力には太鼓判を押す。

「入学時は63舛靴なくて、ガリガリのマッチ棒ですよ。
でも高2の冬のトレーニングで、少しお尻の周りに
筋肉がついて身体ができてきた。
ストレートのキレや伸びはすごいね。
とっても器用なのでスライダー、フォーク、シンカーも
何でも投げられるよ。僕は反対なんだけど」


その理由を聞こう。

「せっかくいいストレートを持っているのに、
今は直球と変化球を5対5の割合で投げている。
僕は7対3で、直球が多くていいと思うんだけどね」


マウンド上の宮國の投球を見ながら上原監督はつぶやいた。

「この冬にフォームを変えたら、
さらにすごいピッチャーになりました。
これから夏に向けて、まだまだ楽しみです」


練習終了後、宮國の女房役である島袋陽平捕手に話を聞く。

「変化球も多彩だし、真っ直ぐの質も群を抜いています。
ピンチでもいつも冷静で、とても頼りになるピッチャーです」


そして、投球練習を終えて、
クールダウンを行っていた宮國に話を聞いた。

「まだストレートは本調子ではないけど、
夏までにはいい調子に仕上げていくつもりです」


練習終了後で、疲れているのか、それとも緊張しているのか、
表情は堅い。上原監督の「ものすごく口下手だから、
取材は大変ですよ」という言葉を思い出す。

続けて「現在の球種」について、質問を投げかける。

「今はそんなに多くの球種を投げていなくて、
ストレートとスライダーとカーブぐらいです。
監督には毎日言われているけど、
自分は真っ直ぐを軸に押していくピッチャーだと思うので、
今はストレートに磨きをかけるように練習しています」


監督の言う「フォーム修正」についても尋ねてみた。

「今まではスリークォーター気味で
ヒジが下がることが多かったんですけど、
この冬にオーバースローに変えてからは、
こっちのほうが投げやすいです。
とにかく今は、フォームを固めているところです」


全国有数の激戦区である今年の沖縄にあって、
「打倒興南」の最右翼として注目されている糸満高。

実際に宮國は08年の1年生大会で、
今春のセンバツ優勝投手、興南高・島袋洋奨に
投げ勝って優勝を遂げている。

しかし、本人は謙遜なのか、謙虚な性格なのか、
「ライバル」と目されている島袋を大絶賛する。

「彼の甲子園での活躍は自分にとっても
いい刺激になっています。
でも、彼の方が一枚も二枚も上手で、
技術も精神面の強さも、すべて尊敬しています」


あまりにも謙虚で優等生すぎる発言。
少し意地悪な気持ちを込めて質問をする。

――1年時には自分が投げ勝ったのに、
今では全国区の有名投手となった島袋君に
悔しさを感じることはありませんか?

まったく表情を変えることなく、宮國は言う。

「まったくそんな思いはないです。本当に尊敬しています」

――じゃあ、ライバル選手、ライバル校はありますか?

こちらとしては「もちろん、興南の島袋です」という答えを
期待しての問いだったが、またしても宮國は淡々と答える。

「今の沖縄はどこもレベルが高いので、
どの学校もライバルだと思っています」


質問の矛先を変える。

――戦いたい相手は誰ですか?

自分でも「誘導尋問のようだな」という自覚をしつつの
質問だったが、ようやく宮國の言葉に力強さが加わった。

「やっぱり、決勝は興南と当たって、
島袋と投げ合って勝って甲子園に行きたいです」


それははたして本心だったのか、
それとも拙い取材者の意図を汲み取って、
気を遣った上での発言だったのか? 
そんな不安を抱き、反省していると宮國は言葉を続けた。

「沖縄県大会を制して、甲子園の大観衆の前で
投げているイメージを想像して、
今はモチベーションを高めています。
手強い相手だけど、興南とも互角に戦えると思っています」


島袋捕手が救いの手を差し伸べてくれた。
上原監督曰く「沖縄の高校野球史上一番かも」という強肩が自慢だ。

「センバツ優勝校の興南高にはしっかり対策を練って戦います。
でも実力は五分五分で、
どっちが勝ってもおかしくないと宮國とも話しています」


糸満高校では宮國に加えて、この島袋陽平も
全国レベルのキャッチャーとして注目されている。
確かに、練習で見せたセカンドスローイングは
高校生のレベルを大きく超えていた。
宮國による島袋評は次の通り。

「とても信頼できる頼もしいキャッチャーです。
いつも、ピンチのときには“ちゃんと腕を振れ!”と
気合を入れてくれます。でも、クラスも一緒なんですけど、
普段はあんまりしゃべったりしないけど(笑)」


憧れの投手は、岩隈久志(東北楽天)と
岸孝之(埼玉西武)だという宮國。
いずれも長い手足を生かしたキレのいいストレートと
バランスのいいピッチングが持ち味だ。

はたして、打倒、興南・島袋洋奨の最有力候補である
宮國椋丞は沖縄県大会でどんな投球を披露するのか? 

全国的にはいまだ無名のヒーロー。
その雌伏のときは終わりを告げ、
大空に向けて今まさに羽ばたこうとしている――。



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shozf5 at 02:26│ 懐かしき文章たち…… 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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