2011年10月13日

『1985年のクラッシュ・ギャルズ』とつかこうへい

1985年のクラッシュ・ギャルズ
1985年のクラッシュ・ギャルズ
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眠れない今朝方、ふと手にしたらあまりにも面白くて一気に読了。

女子プロレスにも、クラッシュ・ギャルズにも思い入れはないけれど、
アントニオ猪木ファンだった僕は毎週週刊プロレスを買っていた。

だから、1985年から95年ぐらいの女子プロレス界については、
リアルタイムで知っていたし、女子プロ対抗戦も何試合か、
会場で見たことがあるので懐かしく読んだ。

個人的に思い入れのある、故つかこうへい氏も登場する。

つかこうへいは長与千種と出会い、彼女に惚れ込み、
長与を主演にして『リング・リングリング』を上演する。

長与がつかさんの稽古場に初めて訪れた場面。
以下、本文中からいかにも「らしい」場面を引用。


まもなく劇作家は驚愕した。
素人女優が、自分にもたれかかって眠っていたからだ。
稽古の後、全員で焼き肉店に行った。
「俺はこいつを信じたね」
つかこうへいがいきなりこう切り出したから、
今度は千種が驚いた。
「俺に寄りかかって居眠りしたヤツなんか、いままでにいたか?
こういう女が信用できるんだよ」



まさに、つかさんらしいセリフだ。
生前のつかさんと呑んだときのことがよみがえってくる。

また、以下のつかさんによる「女子プロ評」もいかにも「らしい」。


「風呂で寝てしまい、我が子を溺死させた母親がいる。
母乳を与えながらうたた寝して、
我が子を窒息死させた母親がいる。
そういうヤツは一生上を向いて歩いたりはしない。
でも俺は、お前たち女子プロレスラーだったら、
そういうヤツらにも力を与えることができるような気がするんだよ。
女子プロレスってなんだ?
普通若い女はおしゃれをしているのに、
お前たちは水着一丁で股ぐらを開いている。
チャンピオンベルトといったって、ただのメッキだろ?
俺はいままで女子プロレスを知らなくて、
ちょっとだけ見せてもらったけど、あんな若さで、
水着一丁で肌をさらしてぶつかっていく姿は、
まるで天に向かうひまわりみたいだな」



まるで天に向かうひまわり!


つかさんのレトリックはいつも優しく温かい。

以前、このブログでも書いたけれど、
僕がつかさんから聞いたのは、内縁の夫と結ばれたいから、
実の娘の入浴中に火を放って殺した母についてだった。

思春期の娘なので、入浴中であれば、
裸で逃げることが恥ずかしく、
逃げ遅れるだろうと考えた母の仕業だった。


「どこまで人は鬼になれるんだ!」


と、酔った直木賞作家は、つぶやくように言い放った。
その姿は、今でも忘れられない……。



本書で参考になったのは、物語の「結構」。

長与千種の章、ライオネス飛鳥の章に加えて、
当時、女子プロに熱狂したファンの一人称で語られる章、
この「三者の章」のコンビネーションが心地よかった。

「ファンの章」が入ることで、それまでの章の再確認ができ、
同時に冷静な視点を呼び起こしつつ、読者を焦らす効果があった。

ノンフィクションにはまだまだいろんな可能性があるな、と
勉強不足の僕は、痛感した次第。オススメします!








shozf5 at 11:48│ 映画、音楽、そして本 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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