2011年09月16日

王さんインタビューの興奮と感動!

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一昨日(14日)、福岡・ヤフードームで王貞治氏のインタビューをした。
一日置いたにもかかわらず、いまだその心地よい余韻の中にいる。

現在進めている新刊の意図を十分理解してくれていた王さんは、
「話していると、だんだん思い出すね」と当時の思い出を語ってくれた。

聞きたかったポイントはいくつかあった。
その中でも、最初に聞きたかったのは次のことだった。


1975年1月17日――。

この日、スポーツメーカーに勤務していた若者が結婚式を挙げた。
若者は、ダメでもともとで王さんを結婚式に招待した。
実は、この日は阪神の主砲だった田淵幸一の結婚式でもあった。
もちろん、球界を代表する王さんにもその招待状は届いていた。

このとき、王さんのとった選択は、

初めに田淵氏の結婚式に少しだけ顔を出した後に、
ゆっくりとその若者の結婚式に出席するという道だった。
このとき、王は当時の番記者にこう言ったという。

「田淵君の結婚式は、オレが出席しなくても、
多くの人たちが祝ってくれるだろう。
でも、彼みたいな裏方さんの結婚式こそ、
きちんと出席して祝ってあげなきゃいけないんだ」


あまりにも、「らしい」発言だった。
このときの心境について、改めて王さんにその思いを聞きたかった。

僕は質問を切り出した。

「彼の結婚式の日は、田淵さんの結婚式でもありました。
そこで王さんは、はじめに田淵さんの式に出席した後に……」

そこまで言うと、王さんは僕の質問を遮るように口を開いた。


「でもね、裏方さんの結婚式こそ、ちゃんと出なきゃいけないんだよね」


……まさに、僕が聞きたかった言葉だった。

あれから36年の月日が流れても、裏方に対する
王さんのまなざしは温かく優しかった。

他にも聞きたかったことがいくつかあり、
それらに対しても、僕が聞きたかった言葉、
さらに「世界の王」だからこその言葉が数多く聞かれた。

本当に心地いい空間の中に身を置くことができた瞬間だった。



……普段、取材相手にサインをもらうことなどしない。
だから、同席してくれた編集者が「サインをもらおうよ」と
言ったとき、初めはカッコつけて「僕はいいです」と言った。

でも、彼が文房具屋で色紙を買っているのを見たとき、
「やっぱり、僕ももらいます!」と自然に口が開いていた。

そして、もらったのが上の写真だ。
色紙にペンを走らせているとき、
その部屋にいた誰もが気づいたけれど、
誰も口にできなかった言葉がある。


(……王さん、日付間違ってます……)


インタビューの最後の最後に、今度発売される
拙著『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』を王さんに手渡した。

この本には王さんのゆかりの人物が登場するからだ。
その人物は今年の春に亡くなった。
拙著を手に取りながら王さんは、彼の思い出話を語ってくれた。

「いい人ほど早く亡くなるんですよ……」


ひとしきり思い出話が済み、王さんが部屋から退出する。
その際に、僕に向かって王さんは言ってくれた。


「これから、たくさんいろんな本を書いてね!」


その瞬間、泣きそうになった。
その前日までに新刊の発売延期を決めたばかりだった。
どのように書き直そうか、暗中模索の渦中にあった。
そんな状態で王さんのインタビューに臨んだのだった。

いまだ答えは出ていないけれど、きちんとしたものを作ろう。
王さんの言葉を聞いて、改めて、そんな決意をした。

僕にとって、一生忘れられないインタビューとなるだろう。
取材音源は、絶対に消さないで保存しようと思う。










shozf5 at 16:57│ 忘れられぬインタビュー 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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