2011年07月02日

19歳少年の希望と挫折……・ユニオンズ取材雑記1

1957・西本道則氏

……すっかり、ごぶさたしてしまいました。
この間、地方取材を何本かこなしつつ、
新刊の執筆にひたすら励んでいました。

秋から来春にかけて3冊の本が出版される予定です。
いずれも、ここ数年取り組んできたことだけに、
大切に心をこめて取り組みたいと思っています。

で、ここ一カ月は、『高橋ユニオンズ』本のラストスパートです。
3年近い取材もほぼ終了し、膨大な記録の山を整理し、
自分で作った年表を基に、その裏付けをとりながら、
ひたすら書き進めている最中です。

ご存じない方のために、簡単に説明すると、
高橋ユニオンズとは1954(昭和29)〜56(昭和31)年の、
わずか三年間だけ存在したプロ野球チーム
です。

これまでプロ野球70年の歴史において希有な、
「企業」ではなく「個人」が所有したチームで、
オーナーは高橋龍太郎という財界人でした。

しかし、このチームは他球団の寄せ集めばかりで、
本当に弱いチームでした。
さまざまな政治事情や金策が尽きたこともあり、
チームは四年目のキャンプ中に解散してしまいます。

現在、このチームについての資料はほとんどありません。
完全に歴史の中に埋もれたチームとなっています。

何とか後世のために、そしてこのチームに関わった人たちのために、
資料的にも価値があり、さらにエンターテインメントでもある、
そんなドキュメンタリーを書こうと試行錯誤している最中です。

かつての選手たちはみな70代後半から80代になっています。
いずれも、その見た目は、普通のおじいちゃんです。
でも、彼らの口から出てくるのは「スタルヒンは〜」とか、
「西鉄の中西に打たれたボールは〜」とか、
まぎれもなくプロ野球選手の言葉ばかりです。

そのたびに僕は、

「お年寄りにも若い頃があり、青春があったのだ」

という、実に当たり前の感慨を抱いてしまいます。


先日、このチームの「四年目の新人」に会ってきました。
高校卒業直前に希望を抱いてキャンプに参加し、
キャンプ途中に球団が解散してしまった当時19歳の方です。

希望を抱いてプロの世界に飛び込んだところ、
開幕を前にして、自身の所属チームが消滅。
わけがわからないまま他球団に移籍を余儀なくされた少年。

運命の波に翻弄された、当時19歳の少年。
彼は60年近くも前のできごとを振り返った後、
小さな声でつぶやきました。


「僕はラッキーでしたよ」


……僕はこの言葉の真意がわかりませんでした。
すると、彼は言葉を続けます。


「だって、三年しか存在しないチームなのに、
四年目に入ることができたんですからね。
高橋ユニオンズの選手としては一試合も出場していないけど、
僕は、今でもユニオンズOBだと思っていますよ……」



その言葉を聞いて、僕は胸が熱くなりました。
上に掲げてある写真は、解散直前の彼の写真です。

この後に待ち受けている試練など知る由もない19歳の少年は、
実に清々しく希望に満ちた表情でピッチング練習をしています。


この本の取材では、何度も胸を打たれました。
そうしたエピソードを何とか一つの形にしたいと、
現在、試行錯誤中です。
また、随時、経過をご報告します!



※今回、あえて「です、ます」で書いてみたけど、
ちょっと気持ち悪いな(笑)。次回から、いつも通り書きます。







PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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