真っ直ぐ、前を――
旅をして、人に話を聞き、そして書く。 ライター長谷川晶一の、そんな日常です。
2010年02月16日
もう誰も自殺しないように! 〜木村カエラの覚悟〜
音楽とことば あの人はどうやって歌詞をかいているのか (P‐Vine Books)
著者:青木 優
販売元:ブルース・インターアクションズ
発売日:2009-03-20
おすすめ度:
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最近、毎晩少しずつ読み進めていた本がある。
それが、『音楽とことば』という、
ミュージシャンたちのインタビュー集。
サブタイトルは「あの人はどうやって歌詞を書いているのか」。
この本は、13人のミュージシャンたちに歌詞作りについて、
インタビューを試みたものをまとめたもの。
ここに登場するミュージシャンで、僕が知っているのは、
・小山田圭吾
・木村カエラ
・小西康陽
・曽我部恵一
・向井秀徳
この5人だけ。
あとは、昨年末亡くなった志村正彦は名前を知っているだけ。
本書は、彼ら、彼女らが自身の歌詞作りについて、
実に率直に語っているインタビュー集。
インタビューも上手で、その文章も巧みで、
自分の知らないミュージシャンでさえもグイグイ読ませる。
ちょっと高いけど、ぜひ人におススメしたい本。
……で、木村カエラ。
『リルラリルハ』という曲は知っていた。
明るくて、元気ないい曲だと思っていた。
けれども、本書を読んで、この歌に込められた意味を知った。
この歌は、彼女の友だちが自殺をしたときに、
感情のおもむくままに作られた曲だという。
そして、インタビューに答えて彼女は言う。
「もう誰も自殺しないように!
わたしの歌詞に内面的なことが多いのは、
それを伝えたいせいだと思います」
悲しいことを悲しく伝えず、明るく伝える技術に
まず、ものすごく驚いた。
友だちの死を描いた歌によって、
自身が売れていくこと、有名になることについて、
戸惑いを感じている点にも驚いた。
……さて、僕も文を書くときにいつも心がけていることがある。
「明日は今日より素晴らしい(はず)」
「人は誰でも(変ろうと思えば)変われる」
そこでは決してネガティブで、人を傷つける言葉は使わない。
本書の中で、木村カエラはこう言っている。
「凄くギリギリで生きている人たちにとって、
この言葉はきついかもしれない、って思った言葉は
絶対に使わないですね。スタッフには
“そんなことないよ。気にしすぎだよ”って言われても、
絶対に使わない。
この言葉には僕は勇気づけられた。
木村カエラの覚悟に僕は素直に感動した。
しかし、この考え方は、もちろん、デメリットもある。
僕の本の登場人物は、「みんないい人ばかりで深みがない」と
しばしば批判を受ける。
わかってはいても、どうしてもそうなってしまうし、
わざわざイヤな人に会い、その人のイヤな部分を書きたくない。
それはそれで仕方がないではないか、
そう開き直りたくなることもある。
そうしたら、本書の中には同じようなジレンマが描かれている。
昨年末、急逝した志村正彦の言葉だ。
「愛してるってことが歌えないからこそ、
(僕は)一流になれないというか。
だって、それを歌えるアーティスト、
たとえばミスチルみたいなアーティストというのは、
やっぱりそのぐらい自分に自信があるんでしょうし、
いろんな愛を歌うことで、
世間をハートマークだらけにしていく
自信があるってことじゃないですか。
でも、残念ながら、僕にはそれがない」
一つの諦念を抱えた中で、彼がその後、
どんな歌詞を紡いでいくのか。
残念ながら、それはもう見ることができないけれど、
それでも、「諦念」とともに生き抜くクリエイターの
覚悟のようなものが感じられて、
この本はどのインタビューも楽しむことができた。
最後に、いしわたり淳治のワンフレーズを。
「テレビで三振しているイチローを、
僕は何もしないで見ている」
本人の言う通り、実にシニカルなリリックだと思う。
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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。
ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com
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