2009年06月14日

素顔の三沢光晴 〜取材を通じて〜

僕がまだ編集者時代に、三沢光晴さんと出会った。
当時、全日本プロレスに所属していた三沢さんは、
「四天王」のリーダーとして、名実ともに輝いていた。


そして僕は、同じく編集者のS先輩とともに、
「四天王」を中心にした書籍を編集することになった。
執筆するのは、音楽ライターの長谷川博一氏。
(僕と同じ「長谷川」だけど、親戚関係はまったくナシ)

三沢さんの大ファンである長谷川さんは、
どうしても「四天王」の本を出版したく、
企画をまとめてS先輩に相談し、実現の運びとなっていた。


その取材を通じて、三沢さんには実によくしてもらった。
激闘を終えたばかりの、仲間だけが集まる呑み会にも、
何度も呼んでもらい、リング上の姿とは正反対の
素顔に触れるたびに、その人間性に魅了された。


その後、「四天王」本は無事に出版され、
幸いにも、好評を博し、売れ行きも好調だった。


そこで、今度は会社に対して、
「三沢さん単体の本を出版したい」と直訴した。
前作が売れていたこともあって企画はすぐに通った。

三沢さんに出版依頼をすると、いつもの静かな笑顔で
「あぁ、いいですよ」とニヤッとしながら快諾してくれた。


――取材は楽しかった。


回を重ねるごとに親しみは増し、酒量も増していった。

この取材過程で、ジャイアント馬場さんが亡くなった。

全日本プロレスの団体存続問題、次期社長問題、
さまざまなものが、当時「エース」の座に就いていた
三沢さんの両肩にのしかかりつつあった。
ちょうどその頃、三沢さんの取材を続けていた。

酒の席で、つらつらと自らの心境を語ってくれた。
当時、抱えていたさまざまな問題は生々しかった。
ちょうどその頃、「ノア」という言葉を耳にした。

三沢さんの中には、後に彼が旗揚げすることになる
現在の「ノア」のイメージが出来上がっていたようだった。

三沢さん単独の単行本は無事に発売され、
こちらも、多くのファンに好評のうちに迎え入れられた。


それ以降も、武道館で試合が行われたその日の夜、
三沢さんと呑む機会を、たびたびいただいた。

いつも淡々とグラスを呑み干し、
気心の知れた仲間たちとバカ話に興じていた。

あるとき、「3人で呑みたい」とS先輩とともに三沢さんを誘った。

青山の鮨屋で、三沢さんとカウンターに並んだ。
相変わらず淡々と呑み続ける三沢さん。
それは実に、ゆったりとしたいい時間だった。
その鮨屋では、何度かともに時間を過ごした。


ある日のこと。


心地よい酔いのまま、店を後にし、青山をブラブラ歩いているとき。
三沢さんが、ぶっきらぼうな口調で、僕たちにこう言った。


「いつでも、連絡してよ、……友だちなんだからさ」


この言葉を聞いて、とても感激したことをハッキリと覚えている。


三沢さんに対して、馴れ馴れしく接することは、
もちろん、その後も決してなかったけど、それでも僭越ながら、
「オレたちは友だちなんだ」という思いは、
僕の中にはしっかりと息づいていたし、
それはS先輩もまた同様だったことと思う。


その後、僕は勤めていた会社を辞めた。
そして、女子高生の奮闘を描いた最初の本を出版したとき、
「こんな本を書きました。もしよかったらお嬢さんに」と
三沢さんに、件の鮨屋で本を手渡した。

その翌年、三沢さんからいただいた年賀状には、
娘さんからのお礼の一文が添えてあった。

きっと、三沢さんが娘に命じて書かせたのだろう、
そう考えると、年明け早々、幸せな気分に包まれた。



昨日、「友だち」が逝った、という。


追悼の意を込めて、古いビデオを引っ張り出してみた。
けれども、どうしてもそのビデオを見ることができなかった。

代わりに、当時、出版された本を朝方まで再読した。
当時の三沢さんのことがさまざま思い出されて、
胸が苦しくなったけれど、それでも、
「この本を作ってよかった」と改めて思った。




三沢さん、本当にどうもありがとうございました。
どうか、安らかにお眠りください。

三沢さんが、リング内外で見せてくれた様々な男気。
少しでも近づけるように、僕も見習います。

本当に、どうもありがとうございました……。



shozf5 at 10:27│Comments(2)TrackBack(0) 忘れられぬインタビュー 

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この記事へのコメント

1. Posted by JIROU   2009年06月14日 12:54
 こんにちは。
 突然の悲報にビックリしました・・・。
 今朝、動画で自らマスクを脱いだ試合と、素顔になって初めてジャンボ鶴田選手と対戦した試合を見ていて、こみあげるものがありました・・・。
 三沢選手のご冥福をお祈り申しあげます。
 また、三沢選手の単独の本も取り寄せて読んでみたいと思います。
2. Posted by SHO   2009年06月15日 01:44
こんばんは。
ホントにショックです。
今はまだ、試合を見たくないけど、
もう少し落ち着いたら、
改めてビデオを見直してみます。
本当にショックです……。

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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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