2009年05月03日

追悼 忌野清志郎 〜清志郎インタビュー〜

……忌野清志郎が亡くなったという。

今から6年前。
僕は清志郎にインタビューをしたことがある。
確か、2時間ぐらい話を聞いたように思う。

高校時代から、RCサクセションが好きで、
清志郎の、原発ソング、君が代騒動など、
リアルロックスターとしての生き方に魅せられていた。

取材当日の、物静かな雰囲気が今でも、とても印象深い。
スタジオでの撮影は長時間に及んだ。
真っ白なスーツを着て、愛用のギターを手にする。
真っ白なスタジオ内にたたずむ、真っ白ないでたちの清志郎。

カメラマンのシャッター音にかき消されるような、
耳を澄まさなければ聞こえないような小さな音色で、
清志郎はギターを弾いていた。

あまりにもその姿が美しく、
残念なことに、何を弾いていたのか、
とても大事なことを見落としてしまっていた。


……そんなことを思い出した。

当時書いた原稿を以下に引用し、
希代のロックスターに、哀悼の意を表したい。





「よろしくお願いします」
 撮影を終え、私服に着替えたロックスターがメイクルームから現れる。長時間に及んだ撮影に少々疲れ気味なのか。静かなたたずまいが印象的だ。
 インタビューが始まる。視線を落とし、決して、こちらと目を合わさない。その声は小さく、何を聞いても、ボソボソ話す。ステージ上で過激なリリックをシャウトしている、その片鱗はない。

「ミュージシャンになりたいっていうのは、早いうちから思ってましたね。昔はオーディションがいっぱいあって、いろいろ受けてたらほとんど受かっちゃうんですよ。で、高校3年の夏休みに東芝音工(現・東芝EMI)からレコードを出せることになって、大学受験をやめたんです。自信? えぇ、ものすごくありましたね。でもね、順調なデビューを果たしたものの、すぐに、“暗黒時代”が訪れたんです。
 最初のアルバムは売れないわ、仕事を干されて3年以上もレコードを出せないわ……。でも、そんなときでも自信はあった。“これ以上稼がないと一人前じゃない”とか、そういうこと考えなかったから。
 高校時代の同級生が大学に行っていたり、就職していることについても、不安やあせりはなかったなぁ。“みんな、普通だな”と思ってた。別に普通でいいのかもしれないけど、僕はイヤだった。50人ぐらいの集団が机を並べてみんなで座っているという状態がホントにイヤだったんですよね。大学もそうだと思ってたし、サラリーマンになっても机がたくさん並んでて、そこにみんなで座ってるのかと思うと、とても、そっちには行きたくなかった」

 相変わらず、視線を机に置いた手元に落したまま、淡々とインタビューは続く。その誠実な態度と、ライブ・パフォーマンスとのギャップに驚かされる。
 そう、つい先日、(03年)4月22日の日本武道館で開催された地球規模の保護・保全を訴える「アースコンシャス・アクト」コンサート。事前の進行段取りを無視して、「海辺にいたらタダで拉致して連れていってくれるよ〜」と叫ぶ、「あこがれの北朝鮮」を、そして、パンク調にアレンジした「君が代」を主催者の反対をも無視して、確信犯で演奏し、放送差し替え騒動を起こしたばかりだった。

「“こんなこと歌ったら、みんなビックリするだろうな。オレだけだろう、こんなこと歌うのは”、そんな喜びが大きいですよね。こないだの『君が代』にしても、狙い通り(笑)。自分のホームページでその経緯を書いたんだけど、僕はいつもの歌を歌っただけなのに。あのホームページはね、わざと冷静なトーンで書いたんだ。
 あそこで怒りをぶちまけると、“忌野、根に持つタイプだな”とか思われるじゃない(笑)。一種の犯行声明? 違う、違う(笑)。
 でもね、問題にしたいのは、FM東京側の言う、『君が代』は電波には乗せない。『あこがれの北朝鮮』は演奏すら認めない、という点。民主国家として、これでいいのかって。事前の打ち合わせで、演奏してはダメだって言うから、“だったら出ません”って言ったんだけど、どうしても忌野清志郎に出てほしいみたいで(笑)。
 だから、別の曲をやるってことにしてね、一応、リハもやったんですよ、納得させるためにね(笑)。演奏中の心境? そりゃ楽しくてしょうがないですよ。
 業界から抹殺される不安? うーん……、婦女暴行とかやんなければ大丈夫かな(笑)」

 この“騒動”を振り返ったとき、それまでの静かな、静かな、清志郎の顔に初めて、表情のようなものが宿った。話に出てくるホームページ上で、清志郎はこう語っている。

「ファンのみなさん、僕はぜんぜん平気で、何とも思っていません。どうぞ、心配しないでください。また僕のコンサートに来てください。僕はいつでも手を抜いたりしません。君のためにいっしょうけんめい歌うよ」(原文ママ)

 このピュアな言葉と、そして、「狙い通り」と言って、ニヤリと笑う姿は、いたずらが成功した、少年のそれを彷彿させる。
 忌野清志郎の中に潜む「少年性」。彼は、「永遠の少年」と称されることも多い。

「なんだか、気恥ずかしいですな(笑)。まぁ、自分ではある程度、そうですね。半分ぐらいは大人だと思っているんですけど(笑)。まぁ、80までには大人になりたいですけどね。今の若者の印象? イヤな感じは全然しないですよ。素直ですよね、みんな。今、若い人も、大人になると楽しいことが終わっちゃうふうに思っている人が多いと思うけど、“そうじゃないんだ”っていうのを、僕は言いたいですね。
 若い頃は、30代、40代に対して、頭が固まっちゃってるというか、“古いな”と思ってましたね。でも、よく見れば、“大人になるのも悪くないな”と思えるような人はたくさんいると思いますよ。
 さっきのFM東京の件にしても、会社の体質っていうのはあるかもしれないけど、社員全体がそういうわけでもないだろうしね」

 「大人」が尻込みしてしまう、反核、反戦、君が代、北朝鮮問題なども、清志郎は「少年」だからこそ、堂々と言えるのだ。
「王様は、裸だ!」と。
 それにしても、なぜ清志郎だけが、問題になるのか? なぜ、彼だけが、騒ぎを起こすのか? ジャパニーズ・ラッパーが、いくら挑発的なリリックを並べても、社会を揺るがす一大事にはならない。清志郎の“言葉”はなぜ、そんなに届くのか?

「言葉が届かないっていうことは問題ですよね。いろいろ原因はあると思うんですけど、やっぱり、いちばんはリズムだと思う。リズムのことをしっかり考えないとね。言葉が抜けるようなリズム、声が抜けるような感じ。そこがいちばんだと思いますね」

 インタビューの後半、50問にわたる、一問一答取材を試みた。たとえば、こんな風に。

――“頭のいい人”って、どんな人ですか?
「最後に笑う人でしょうね」
――“バカな人”ってどんな人ですか?
「背伸びしてる人、かな」
――あなたは何のために生まれたのですか?
「生きるためですね」
――日本の好きなところはどこですか?
「温泉がたくさんあるところですかね」
――日本の嫌いなところはどこですか?
「後先考えず、自然を破壊してしまうところ」
――あなたは国のために戦えますか?
「戦えません」
――戦争について、どう思いますか?
「もういいかげんになくなってほしいです」

 そんなやり取りの中で、いかにも“らしい”フレーズがあった。「生まれ変わるなら何人(なにじん)になりたい?」という質問に対して、彼はこう答える。

「何人っていうか、国っていうものがなくなってくれればいいと思いますね。生まれ変わる頃には」

 その理由を聞く。

「国っていうものが、地方都市みたいになっちゃえば、地球っていう、1個のものになると思うんですよね」

 そう答えたあと、ちょっと照れて「国連みたいな考え方って言うんですかね」と笑った。清志郎は、ジョン・レノンの『イマジン』を自ら清志郎流に訳詞して歌っている。最後の質問を投げかける。

――あなたは一体、誰ですか?
「忌野清志郎です」

 彼は、間髪入れずに答えた。そして、ロックスターは「お疲れさまでした」と立ち上がる。100万円以上かけてカスタムしたという愛車の自転車にまたがり、改めて「じゃあ」とスタジオを去っていった。それは、やはり、ステージ上とは異なる、静かな静かなたたずまいだった。





shozf5 at 01:26│Comments(4)TrackBack(0) 忘れられぬインタビュー 

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この記事へのコメント

1. Posted by NO.30   2009年05月08日 13:47
こんにちは。お疲れ様です
GWも取材でしたか?
長谷川さんのブログおもしろい
いろんな生活場面が目に浮かぶ
清志郎さんのコメント。金八先生のあの場面 実にはまります。
ところで、BTDの件電話してもよろしいで
しょうか?
2. Posted by SHO   2009年05月10日 00:24
NO.30さま

こんにちは。
コメント、遅くなってスミマセン。
ごぶさたしています。
BTDの件、いつでもご連絡ください。
どうぞ、よろしくお願いします!

3. Posted by ウォータズ11   2009年05月11日 12:10
こんにちは。
ジュンジさんと葬儀行ってきましたよ。
5時間半も並んで、
しっかりお礼いってきました。
今度飲みましょうね、
あの日を思い出して。
4. Posted by SHO   2009年05月12日 01:37
こんにちは。
テレビで見たけど、すごい人でしたね。
僕もあれ以来、ずっと清志郎CDを聞きまくりです。

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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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