2007年09月02日

粋 第13回 〜日本のソウルを探検する!!〜


久々に『粋』をアップしたい。

もうご存じない人のために、改めて説明すると、
これは2000年から2001年にかけて、
某男性誌に「雪之丞華之介」という
ふざけたペンネームで、僕が書いていた、
「粋な男になるために毎月、新たな挑戦をする」
という連載の再録。


毎月、毎月、仕事のフリをして
都内各地を歩き回る(呑み歩く)という、
本当に楽しい連載だった。

で、この13回は、都内のコリアタウンを巡り、
やはり、マッコリを呑み歩いているだけだった。

長文で、読みづらいかもしれませんが、
お時間があれば、ぜひ!


01.11






第13回

2002年W杯・日韓共催記念特別寄稿

日本のソウルを探検する!!

いよいよ、あと一年に迫った日韓共催のワールドカップ。
「近くて遠い国」だとか「犬猿の仲」、「近親憎悪」など、
あまり印象のよくないフレーズも昔から根深く存在する。
そこで、韓国研究家でもあるオレが、日本の韓国、
「コリアタウン」を散策し、現在の日韓関係を探ってみる。
日本初の狂牛病騒ぎのなか、ひたすら焼肉を食いまくった。
新宿ビル火災の激震のなか、新宿をひたすら徘徊した。
(以下、スクールウォーズ調で)これはその物語を、
余すところなく原稿化したものである!(声・芥川隆行) 


「魂」と同じ発音を持つ街、“ソウル”にまつわる物語

韓国に向かう飛行機の中でコレを書いている。
嘘だ。簡単に人を信じるな。オレからのアドバイス。

でも、心はソウルに飛んでいる。そう、韓国・ソウル。
「魂」と同じ発音を持つ、情の濃い人々の街、ソウル。

今、東上野のキムチストリートで
ビビンバを食いながらマッコリという酒を呑んでいる。
ホントだ。あまり人を疑ってかかるな。
猜疑心が強いとせっかくのチャンスを逃すぞ。アドバイス2。

何をいいたいのかというと、
コリアタウンは総じてメシがうまい、ということだ。
メシがうまいということは当然酒もうまい。
だから、コリアタウンはいい街だ、という三段論法。
記号のようなハングル文字に恐れおののいてはいけない。

オレがコリアタウンに初めて足を運んだのが、
20の春のこと。
先輩に連れられていった韓国家庭料理屋で
酒が原因でささいなトラブルがあった。
先輩もオレもなぜか臨戦態勢モードで一触即発状態。
ケンカの相手は韓国人だった。
以来、オレの韓国人に対する印象は最悪だった。

そして、21のとき。初めて友人と海外に旅行をした。
行き先は韓国・ソウル。ただ安かったから、それだけの理由だ。

しかし、タクシーの乱暴な運転、ゴミゴミした街並み、
流暢な日本語で近づいてくるポン引き……。
ますます韓国に対する印象が悪くなった。

そんな最悪の印象が氷解したのは単純な理由だ。
恋をしたからさ、韓国の女に……(以下長くなるので略)。

というわけで、韓国に対するオレの印象は変わった。
ソウルには十数回行き、
猪木のプロレスを見に北朝鮮にも行った。
そんなオレだが、今年はまだ一度も韓国には行っていない。

旅心がムズムズしてきたオレは
日本の中で韓国を探す旅に出た。

とりあえずは東上野のキムチストリートに出陣。
無煙ロースターとは無縁の焼肉屋で、
マッコリ呑みながらこの原稿を書いているってわけだ。

話はそれるが、
「毎月毎月ビールばっかり呑んで楽しそうだね」とよくいわれる。
だからいま、マッコリを呑んでいる。
あぁ、うまいうまいマッコリはうまい!
これがオレの公式見解だ。いかんいかんまことに遺憾。
下らないよ。マッコリの白濁液にやられてしまったのか?
さぁ、今月のクエストの開始だ。


韓国オカマガールとの深夜の大攻防戦!

場所は新宿。西武新宿駅北口。
区立大久保公園から都立大久保病院の辺りに
「ソレ」は存在する。

身長170〜180センチ。
タイトなスーツはボディラインをよりシャープに際立たせ、
スラリとした真っ白な生足が暗闇の中で
きれいなシルエットを描いている。

歌舞伎町、新大久保には「立ちんぼ」と
呼ばれるストリートガールが多数生息する。
西武新宿線線路と平行した、
細く薄暗い通りに存在する韓国人街娼。

しかし、ここのガールたちはただの街娼ではない。
全員「男」なのだ。

数年前、酔った自衛隊員が、
この「女性」とホテルに入って、真実を知り、
逆上して殺傷事件を起こした。
ここはそんな「女」ばかりなのだ。

普段は「遊ンデカナイ?」の声がわずらわしく
あまり通らないようにしているがあえて行ってみた。
この日、ここには4人の「女」がいた。

さっそく声をかけてくる。
オレは気のないフリで「こんばんは」。

脈アリとみたのか「遊ボウヨ。安イヨ」ときた。
「安い?」。「ウン安イ」
と指を2本差し出す。「2?」とオレ。
はたから見たら、ジャンケンのアイコ状態だ。

「安イヨ、安イヨ。サービススルヨ」。
「サービス?」いかん、乗ってしまった。
「気持チイイヨ」。「どんなサービス?」
「●●●●●(自主規制)」。「マジ?」。
乗ってくるオレ。近くで見るとルックス、スタイルは超◎。
揺らぐ自制心。心を鬼にし、カメラを取り出す。
「写真ダメ」と腕を引っ張られる。
もうヤケだ。暗闇に光るフラッシュ。
周りにいた「女」たちが近寄ってくる。

逃げろ、と走り出す。後ろから「バカヤロー」の声。
あのハイヒールでは追いつけまい。
心臓バクバク。少し、やりすぎた。反省。


特命指令・「幻のナベ」の伝説を追え、そして食え!

密造酒を出してくれる韓国呑み屋がある。
密造酒というと大げさだが、日本でいう「ドブロク」、
韓国でいう「マッコリ」。

市販のマッコリと比べ、味の違いがわかるような
粋な男ではないオレには、
そう大して違いはないような気がするが、
呑む人が呑めばまったく違うものらしい。

で、大久保の、ある家庭料理屋でチヂミを食し、
マッコリを呑んでいたとき、「その鍋」の話になった。

近頃、体調が優れないという、
その店のオンマ(ママ)曰く、

「ポシンタン食べたら一発で治るんだけどね」

ポシンタン? 聞くと、韓国に伝わる薬膳料理だという。
漢字では「保身湯」。文字通り体によさそうなネーミング。
そして、その食材は、犬!

韓国では犬を食べる習慣がある。
しかし、88年のソウルオリンピック前後から、
対外的なイメージから、犬鍋追放の動きが活発化し、
表立って犬料理を出すところが極端に減少した。

日本人が鯨や馬を食べることを
外国人がとやかくいうのが大きなお世話であるように、
韓国の食文化にとやかくいうつもりはない。

でも、いざ犬の鍋が出てきたら抵抗はあるよな、正直。
オンマ曰く「味もよくて元気も出て、夏はポシンタンに限るよ」
と強くススメる。聞くと、大久保近辺にも数件、
ポシンタンを食べられる店があるという。
場所を聞き、後日行ってみることにした。

しかし、その翌日。偶然なのか必然なのか?
本誌編集部で談笑していると
知り合いのカメラマンがオレにいう。
「荒川に犬肉を出す店があるんだって」。

誰かがオレにポシンタンを食え、と命令している!
信心深いオレは神の声を聞いた気がした。さあ、荒川へ出発だ。


これが、ウワサの「その鍋」なのか!

韓国人の友人に聞くと
その店は常磐線沿線の某駅にあるとのこと。

さっそく日曜日の昼下がり出かける。
どこにでもある大衆食堂の佇まい。
ポシンタンはメニューにはなく、
タン塩、ハラミ、コメカミ、カルビなどを食べる。
しかし、今日は目的がある。おずおずと聞く。
「ポシンタンはありますか?」。するとオバチャン、
「メニューにないものはないよ」。ないはずはない。
オレには食わせられないのか? 仕方なく店を出る。

時刻はまだ二時前。
九月の陽光が失意と傷心のオレに優しく降り注ぐ。

とぼとぼと駅に向かう道すがら、
韓国家庭料理屋の看板が目にとまった。
「韓国料理」「いらっしゃいませ」と
書かれている下に「●●●」とある。

ハングルの読めるオレだ。
「ポシンタン」と書いてあることぐらいお見通しだ。
やはり、神はおっしゃっている。「ソレ」を食せ、と!

店内に入り、メニューを見ると
「ポシンタン」とはなく「●●●●」とある。
直訳すると「ワンワン鍋」。
かわいいネーミング。でも犬。あぁ…。

焼肉を食べたばかりで満腹だが、
ポシンタン5000円也と生ビールを頼む。
ドキドキすること数分。
ついに「その鍋」はやってきた!

ニラ、ネギ、セリの葉に隠れ、中の様子は窺えない。
テーブルのコンロに火をつけ、さらに煮込む。
ゴマ油に唐辛子の粉をまぶしたタレにつけて
モグモグと食べるのだという。

恐る恐るスプーンを入れる。肉だ!
汁とともにていねいにすくう。思い切って口に入れる。
どこかで食べたことがある風味。

しばし黙考。

あっ、そうだ、ジンギスカンだ、羊の肉だ!
あるフレーズが頭に浮かんだ。

そう、「羊頭狗肉」。

羊の頭を掲げて犬の肉を売った話。
そう、犬と羊は味が似ているのだ。
ナゾのゼラチン質のモノが何なのか、
少し気になったが構わず食べる。
気のせいか、体がカッカしてくる……。

目的を達成し意気揚揚と帰宅する。
でも、ご近所さんが飼っているワンちゃんと
すれ違うときは胸がキュンと痛んだよ。
さて、来月も粋を求めてさまようか!
道は長い……。


本誌的「日韓関係」とは何か?

昔から隣国として密な関係を持つ日本と朝鮮半島。しかし、韓国=焼肉、キムチという貧困なイメージのヤツが多い。が、映画では『シュリ』や『JSA』が大ヒットし、ドラマでは『ファイティングガール』に韓国の人気女優、ユン・ソナが出演。音楽の分野ではエイベックスが韓国ミュージシャンのリリースを続々と手がけ、韓国マンガもこの8月にいっせいに発売された。ジワジワと韓国カルチャー(Kカルチャー)が日本にも進出。2002年W杯の共催でますます盛り上がる両国の関係。戦後補償など問題はあるさ。でも、オレらは新しい時代を考えていこうぜ。


雪之丞華之介●「強い者が勝つのではない、勝った者が強いのだ」。「強さ」という論理と「闘い」という思想。寺山のいいたかったことが、今のヤクルトを見ているとよくわかってきた。哲学かぶれの恋に恋する31才。













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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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