2007年07月26日

粋 第11回 〜ただひたすらに銭湯につかる!!〜


さて、そろそろ『粋』が恋しくなってきませんか(笑)?
賛否両論あっても、全15回です。
残りあと5回だけです。
否定派のみなさん、あと少しの辛抱です。

……ということで、今回も『粋』の強行採決。

今回は「銭湯」がテーマ。
読み返してみていろいろ思い出したけど、
確かにこの月は、毎日数軒の銭湯に通いつめた。

本文に登場する「イソギンチャク」は
いまだに、僕にとっての衝撃映像だ。

この月は、いつも湯上り状態で、お肌ツルツルだった。
で、おいしいビールをたらふく呑んだ。
暑い夏のことだっただけに、とても幸せな時間だった。


01.09




第11回

汗かいて、風呂入って、うまいビールを呑む

ただひたすらに銭湯につかる!!

暑い暑い暑い暑い暑い暑いホット暑い暑い暑い暑い暑い!
なぜにこんな暑いのか? 汗ダクダクダクの毎日だ。
こんなときは熱い風呂に入ってビールでも呑むに限る。
そこで、今回の粋は、現代に残された数少ない
町の社交場、銭湯にスポットを当ててみる。
鼻歌でも歌いながらゆっくり風呂につかってみよう。
うまいビールの最高のつまみ、汗と風呂。
いい汗かいて、それをさっぱり洗い流そう!
内風呂全盛のこのご時世。銭湯に粋はあるのか?


消えた銭湯。突然の「現実」に寂寥感を味わう

風呂上りのビールを呑みながら、
今、この原稿を書いている。

体温並みの暑さが続く毎日。読者諸君、
夏バテなんかしてないだろうな。
オレはすっかりバテバテだ。

食欲、性欲ともになく、暑さと多忙とで
睡眠欲まで奪われてしまっている毎日。
でも、B欲だけは相変わらずだ。
B欲、中国人はそれを「麦欲」と呼ぶ。
そう、決して失われることのない「ビール欲」。

毎日、毎日、これでもか、
というほどうまいビールを呑んでいる。
いゃあ、いい季節になりましたな、ご同輩!
と社交辞令もそこそこに本文を進める。

うまいビールの二大条件として、
スポーツ後のビール、風呂上りのビールがある。
で、最近草野球にハマっているオレは、
汗をかいたあとさらにうまいビールを呑むために、
町の銭湯を探索することにした。

まずは、ある雑誌に載っていたオススメの
銭湯に行ってみることにした。
住所を頼りに、高円寺の町並みを歩く。
駅前の喧騒を抜け、住宅街を練り歩く。
夏の日差しがキツイが、この汗を洗い流し、
体内のありとあらゆる水気を抜く。
そして、本当にうまいビールを呑むのだ。
その一念でひたすら歩く。

もう少しで煙突が見えるはずだ、
そう思い、さらに、ひたすら歩く。
しかし……、歩けども歩けども、煙突は見えない。

すると、突然、視界が開ける。
そこは、ただ荒涼たる空き地が広がるだけ。
そう、廃業していたのだ。

あぁ、何てこったい! 
いきなり現実をつきつけられたよ。
やっぱり、銭湯は時代に取り残された、
過去の遺物なのか?

立ち入り禁止の柵を乗り越え、中に入る。

廃墟の中には、所々にタイルの破片があったり、
カランのカケラが落ちていたり、
溶けかけたケロリンの洗面器があったり……。

いきなり、寂しい気持ちに襲われた。
一緒に行ったイラストレーターのM氏とともに
無言でそこを後にした。

その後、トボトボと歩きつづけ、気がつくと荻窪。
そのとき、閑静な住宅街に聳え立つ煙突を見つけた。

本当に心から救われた気分だった。
二人で湯船につかる。
備長炭の軟水風呂が異常に気持ちいい。
きっと風呂上りのビールはうまいに違いない。
さぁ、前途多難のスタートだ。


肛門はそこまで進化するものなのか……

中野は沼袋。オレが学生時代に住んでいた街。
この駅前にある「一の湯」。
ここは、岩風呂が有名な銭湯だ。
学生時代に何度か利用した、
この風呂に久しぶりに足を運んだ。

日曜日の午後4時。オープンと同時に入る。
オレは岩風呂に直行する。先客はすでに3人。
萱葺き屋根から差し込む強い日差しの中、
のんびりと湯につかる。岩に腰掛け半身浴。
肩までつかり天井を見上げる。
そして、目をつぶり自分の半生に思いをはせる……。

「ウ〜。ウゥゥゥ……。アッ、ウ〜」

先ほどからうめき声をあげている
オッサンのせいで思考が中断された。

よく見るとそのオッサン、
相撲でいう蹲踞のポーズで湯につかっている。
そして、上半身は姿勢を正したまま、
上下に体を動かしている。

何をしている、オッサンよ?

そんなオレの「?」が通じたのか、
オッサンは申しわけなさそうにオレに言う。

「ごめんな、痔なんだよ」

痔だと蹲踞なのか?
よくわからないまま、あっそうですか、
とお追従するオレ。

「じゃ、お先に」

前も隠さず、堂々とオレの横を通り過ぎ、
岩をまたいで浴槽を出るオッサン。

そこで、オレは壮絶なモノを
目の当たりにするとともに、
オッサンの不可解な動きの謎も解けた。

オッサンのお尻にイソギンチャクがついていたのだ。
桃屋の「ごはんですよ」のフタ大の
直径のイソギンチャク。
いや、イソギンチャクと化した肛門。
手術すればいいのに。人ごとながら心からそう思った。
あれじゃあ、座ることは不可能だ。
そりゃ、蹲踞しかないだろ。

しかし、同じ湯船に入っていたと思うと、
ちょっと複雑な心境だ。


銭湯には幼女も業界人もロッカーもいた!

今回の取材に当たって、オレは東京都公衆浴場組合
発行の「共通入浴券」を買った。10枚で3800円。
一回当たり20円の割引回数券。

一日、4軒、銭湯を回ったりもしたが、
最後は湯あたりして、鼻血が出た。

神楽坂、新宿、中野、すべてなじみの呑み屋に
近い銭湯を選んで行った。
ひとっ風呂浴びてのビールはどれも格別だった。

しかし、神保町の「梅の湯」だけはちょっと、
イヤ、かなり緊張した。5才程度の幼女が
ジイサンに連れられ入っていたのだった。

ちなみに、都の条例では10才以上の混浴が禁止されている。

で、その女の子が異常にオレになつく。
髪を洗っていると首筋に熱い視線を感じる。
その子がオレの真後ろでじっと見つめているのだ。
体を洗っていると石鹸を取ってくれる。
下手したら「お背中でも流しましょうか?」と
いいかねない雰囲気だ。

いくら体を洗おうとも、心が汚れきったオレには、
その全裸の幼女はまぶしすぎた。
その趣味があるヤツにはたまらない
シチュエーションだろうが、
あいにくオレにはその気はない。辛い辛い30分だった。

青山のド真ん中にある「清水湯」。
ここはなかなかいいあんばいだった。
最先端業界人風の男もシワシワ老人も金髪ロッカーも
みんなひとつの湯に入る。
彼らから見たらオレはどう見えるのか?
なんてことを考えつつボンヤリと過ごす。

脱衣場のぶら下がり健康器に意味もなくぶら下がる。
カラカラの体でますますいいあんばいで、
すぐ近くのなじみのバーに入る。
気分が高揚しているので、マスターに話し掛ける。

「今、そこの風呂に入ってきたんだ」。

すると、「結構いらっしゃるんですよ」とのこと。
考えることはみんな同じなのねん。


そして、ついにウワサの風呂会に参加する!

「風呂会」という存在を知ったのは、
知り合いのカメラマンからの情報だった。

都内のいい感じの銭湯に出向き、
みんなでひとっ風呂浴び、
地元のこれまたいい感じの呑み屋でみんなで一杯やる会。

まさに、今回の「粋」とピッタリではないか。
オレは俄然、この会に興味を持った。

ぜひぜひ、参加したい!

で、件のカメラマンに頼んで、
無理やり参加させてもらうことにした。

当日、田端駅に集合。
さっそく、風呂会会長と副会長にごあいさつ。
会の趣旨や歴史を聞きながら、
メンバーがそろうのを待つ。

やがて、副会長の友人だという、
マダガスカル人男女などを含め、計9名が集合。
みんなで、「梅の湯」を目ざす。

途中、ブラブラ商店街を冷やかしながら
銭湯に到着、さっそく入浴。

しかし、不思議な感じだ。
出会って20分も立っていない、
初対面同士がいきなり全裸で風呂に入っている。

しかも、マダガスカルから来たという彼は、
日本語がしゃべれない。
お互い片言の英語でコミュニケーションを図る。
不思議な感じ。

マダガスカルのカメレオンの話などしながら
漢方風呂に入る。彼はどうやら、熱い湯が苦手なようだ。
副会長は念入りに体を洗っている。

イラストのM氏はちょっと湯あたりしているようだ。
オレは頭の中にビールのイメージが浮かんでは消える。
あぁ、呑みたい呑みたいビールが呑みたい、
と唱え、湯を出る。

上気した顔のみんなと都営荒川線「小台駅」から
王子に向かい、駅裏のいい感じの大衆酒場に入る。
タン、レバ、ミノ、モツなど「ホルモン感」
あふれるメニューもイメージ通り。

さっそく、みんなで乾杯!
つい一時間ほど前に出会った9人が、
いっしょに風呂に入って、酒を呑む。
こういう濃密な人間関係もいいもんだ。
人づき合いが苦手な
半ヒッキーなオレでも素直にそう思えた。

みんなのいい呑みっぷりにつられて
オレのピッチも早くなる。
あぁ、やっぱりうまいビールはうまい。
さぁ、夜は長いぞ。来月も頑張ろう!



銭湯とは何か?

聖徳太子が広めた仏教では、仏に仕えるには汚れを落とすことが大事と説いた。そこで、平安時代にはすでに銭湯の原型といえるものが出現する。その後、鎌倉、室町時代を経て、江戸時代には庶民の社交場として銭湯が定着する。ちなみに当時は混浴だった。全国浴場組合に加盟しているのは平成13年3 月現在6325軒。入浴料金は、東京、神奈川の400円を最高に、沖縄の200円までさまざま。東京都では昭和43年の2687軒をピークに平成12年度には約1300軒程度に減っている。現在は、年間400軒のペースで廃業しているという。



今月のひとこと

嗚呼素晴らしき、草野球!
最近ホントにビールがうまい。というのも、草野球と銭湯にハマっているからだ。試合がない日でも新宿のバッティングセンターに出向き、鍛錬を怠らない。で、死ぬほど汗をかき、フラフラになって銭湯に飛び込む。ここでも、一滴も水分を補給しない。ガマンにガマンを重ねて呑むビールのうまいこと。これはもう筆舌に尽くしがたい。このうまさをきちんと描写できるようになったとき、オレは一流の物書きになるのだと思う。なんてな。


雪之丞華之介●スカパー!に加入した。そのチャンネル数の多さにとまどいつつも「代ゼミチャンネル」で日本史の勉強をしようかと考えている、あの娘に夢中な31才。





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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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