2007年07月09日

粋 第8回 〜「上野」をただただ散策する!〜


今日、また『粋』を評価してくれる
「美女」のお姉さんに会った。

そのお姉さんが、妹からの伝言をしてくれる。


「私、粋、嫌いじゃないよ、粋……


でも、その美女の妹とは、一度しか会っていない。
でも、ちょっと、調子に乗っちゃった。

しかも、寅さん好きの20代美女。

そうなったら、仕方ない(笑)。
第8回の『粋』なのです。

H編集長、6年前の原稿が、
こうして、20代中盤の
妙齢の美女にも通じています。

よかった、よかった……。
『知床慕情』、万歳! あぁ、式根島!


01.06






第8回

アメ横だけじゃない「北の玄関口」の魅力
「上野」をただただ散策する!

「上野発の夜行列車下りたときから……」に象徴される
ように、上野と言えば「北の玄関口」として名高い。
しかし、東北新幹線や上越新幹線など、もはや東京駅に
その地位を奪われている感は否めない。
読者的には「アメ横」や「ABAB」の上野、
そんなイメージしかないかもしれない。
そこで、今回は、上野にまつわるエトセトラをお贈りする。
ただ、正直に言う。オレも上野ってよくわかんない。
どうしよう。ちょっと、いや、かなり、弱気なスタートだ。


その日、オレは上野で途方に暮れていた……

創業260年、上野蒲焼の名店「伊豆榮」にオレはいる。
六階の個室から見下ろす不忍池。
遠くに見える動物園の辺りは桜が咲き誇っている。

「ふるさとの訛なつかし停車場の
人ごみの中にそを聞きにゆく」

と詠んだのは啄木だったっけか、
ビールを呑みながら、
ふるさとに残した両親に思いを馳せる……。

……なんて全部ウソだ。
オレは相も変わらず「蒲焼はウメェや」と
ビールを呑んでるだけだ。

長い前フリで恐縮だが、今回のテーマは上野。
上野と言っても広うござんす。

アメ横ぐらいしか思い浮かばないオマエらのために
今回はオレ版「上野の歩き方」をお贈りしよう。


さて、伊豆榮の蒲焼をひたすら
頬張りながら今回の作戦を練る。

が、特製松花堂弁当(4000円)が
あまりにもうますぎて考えがまとまらない。
ここは食べる(呑む)ことに専念して、プランは後回し。

そしてプランを練ろうと
京成線乗り場の辺りをフラフラ歩く。

と、3月号で掲載されていた500円ポルノ映画館がある。
よし、暗闇の中、煩悩と闘いつつ、
仕事に励むのもストイックなオレにはお似合いだ、
と入場する。確かに税込み500円だった。

だが、予想に反して場内は立ち見。
通路にまで客が溢れ出している。
ちなみに定員90名の館内。立ち見で50人はいた。
これでは、考えもまとまらない。

オレは『巨乳三姉妹』の巨乳を一度も拝むことなく、
10分程度で外に出た。

映画館のすぐ近くに「下町風俗資料館」がある。
入場料300円を払い、ここで作戦を練ることにする。

この資料館は下町の長屋を模した展示物が並び、
下町の娯楽、子供の遊び、生活道具、
職人道具などに実際に触れることができる。

ここのいいところは実際に部屋にあがれるところだ。
ちゃぶ台のおかれたお茶の間で
あぐらをかきながらアレコレと思案をめぐらす。

すると、ひらめいた。
「そうだ、上野公園に行こう!」
陳腐な結論だと思うか? 思いたきゃ思え。
人生の真理はシンプルなところにある、
と前も言っただろ。

上野公園なら、人も多いし、動物園もあるし、
ちょうど花見の時期だし、もってこいだ。


トラウマが生まれるとは、こういうことなのだ

上野といえば「上野動物園」。
異論のあるヤツは無視する。

で、平日の昼下がり、ブラリブラリと動物園を目指す。
久々にパンダのお姿でも拝もうじゃないか。

が、その目論見は入場口でもろくも崩れた。
大きな看板には「パンダの展示休止中」とある。
理由は「繁殖のため」だそうだ。仕方ない。

でも、納得いかないのは、行き先がメキシコであること。
本場中国ならまだしも、メキシコに繁殖に行くと知って
「タイの買春ツアー」を思い出したオレは不純な大人なのか?

さらに、合点がいかないのは、その横にある
「レッサーパンダを展示しています」という看板。
レッサーパンダなんて、アライグマみたいなもんだろ。

「パンダ」と名がつけばいいってもんじゃないだろ、
と思ったオレはクレバーな大人だと思う。

まぁいい、久々の動物園を楽しもう。
まず、パンダ園にいるレッサーパンダを見る。
案の定「なぁんだ、パンダいないんだ」という親子連れ
のため息で溢れていた。

3才ぐらいの男の子がパパにたずねる。
「ねぇ、パンダさん、どこに行っちゃったの?」

質問に答える20代と思しきパパの答えは想像を絶していた。

「パンダさんはね、ライオンに食べられちゃったんだよ」

まるで赤ずきんちゃんに真実を明かす、
狼のようなイントネーションだった。

その瞬間、

「ヴォオオオオオオオオオォーン」

と号泣、慟哭の雄叫びを発する3才児。
つづいて、「キェーッッッッッ」と奇声。
まさに、トラウマの発生現場を目の当たりにした瞬間だった。

「何てこと言うの!」と

妻にグーで殴られたのも当然だよ、パパ。


花見に人生をかける男たちの物語

桜も散り始め、葉桜となったある日、
上野公園に出向いた。

昼の一時ということもあり、
まだまだのんびりとした空気が漂っている。

しかし、ビニールシートによる花見の場所とりは
すでに始まっており、
昨夜の残飯をあさるホームレスも
山と積まれたゴミ捨て場を必死に探索している。

公園中央にある噴水広場に
人だかりができているので寄ってみた。

そこには、発動機を持ち込み、
カラオケフルセット
(何とスピーカーは4ウェイシステム!)で
熱唱するオッサンがいた。

ホームレスと見まがうばかりの、
超シンプル衣装に身を包み、
聞いたことのない演歌を歌っている。

すると突然、そのオッサン、

「ダメだダメだダメだダメだ」

とダメだしの4乗で、スイッチをオフにする。

突然の静寂に固唾を飲む観客(単なる野次馬)。

すると、

「すいません、きちんと練習してきますんで、
 今日は勘弁してください」

元より、何も期待していないから、
勘弁も何もないが、そう言われたら
「まぁいいさ、またやり直せばいいよ」
という素直な気持ちになれるから人間の心って不思議だ。

ちょっとした感動を胸に、公園を後に駅の方へ歩を進める。

すると花見の場所とりのビニールシートに人がいる。
きっと新入社員なのだろう。
まだ板につかぬスーツ姿で所在なさげに
あぐらをかいている。
コンビニのビニール袋にはトランプや花札が入っている。

大志を、野心を、希望を抱いて入社したキミに
与えられた初の大役は「花見の場所とり」。
しかし、キミよ嘆くな。落胆するな。卑下するな。
キミの頑張りが、この夜の同僚の感動を呼ぶのだ。
キミの会社員生活に幸多かれ。


ほとんど妄想の世界にオレはいた。

なぜだかメランコリックな春の上野の夕暮れ

カラオケオヤジと場所とり新人のおかげで、
優しい気持ちのまま、駅につく。
小腹がすいたので、
駅前の「じゅらく」で遅いランチを食べる。

店内には期待通り、電車の時間を待つ、
家族連れが多数いる。

オレが通された席の隣には、
60代の老父母とそれを見送る40代の娘の三人連れだ。

山手線が通るたびにガタガタと轟音をあげ
微妙にコップの水面が揺れる店内。
オレは「Aランチ」を食べていた。
ずっと沈黙がつづく隣席。沈黙を破ったのは父親だった。

「お前の結婚式で見た、
 ホテルオークラの庭園はきれいだったね」

「ホントに見事な松の木でしたね、お父さん」

黙ってクリームソーダを飲む娘。

「ユキエもおぼえているかい? あの立派な松の木を」

父親に問われて、静かに答える娘。

「えぇ、おぼえているわよ。
 でも、お父さん、もう15年前のことじゃない」

何てことはない会話だが、
15年前に娘の結婚式でただ一度見た、
一流ホテルの庭園の話を、今、ここで、話す老いた父。
おそらく何度もこの話をしているのだろう。

自分で言うのも変だが、
この日のオレはなぜだか感傷的になっていた。
ビールも呑んでいないのに。
ましてや泣き上戸でもないのに泣けてきた。

「弱気になっちゃだめよ」と
普段からみんなに言われているオレは、
ウルウルきている涙腺を必死になだめた。

なんか辛気臭くなってきた。

場所を変え、アメ横のガード下の大衆酒場に入る。
生は500円、たこブツ200円、
マグロブツ200円を頬張りながら、
今日起こったことを反芻する。

隣のピエールカルダンのキャップをかぶった
オヤジがホントにうまそうにコップ酒をすする。

「粋」とは何か?

答えの出ない問いに思いあぐねていると、
隣のオヤジが叫ぶ。「冷やおかわりね」

時刻はまだ4時。そうだ、いいから呑もう!
呑めばわかるさ、わからなければまた呑むさ。
道は長い。さらなるクエストを続けよう!


今月のひとこと
今日も、ビールはおいしい!
大阪で「吉本新喜劇」を、甲子園でセンバツの決勝戦、常総学院対仙台育英戦を見てきた。東京では、ZERO−ONEの武道館大会を見て、神宮では野球も見た。こんなに楽しくていいのか、という毎日だが悩みもある。それは、新日の今後。この号が出る頃には、福岡ドーム大会は終了しているが、新日はこれからどうなるのだろう。最近の猪木の暴走っぷりは楽しいが、新日もここらで、一矢報いる必要があるだろう。以上、多事争論。


雪之丞華之介●「仕事に追われ、家庭を顧みないのには気をつけたほうがいいよ」と忠告を受けた。が、「家庭に追われ、仕事を顧みない」のが実情の30才。でも、ホントはあと数日で31才。







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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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