2007年07月06日

粋 第7回 〜「野球盤」でひたすら遊ぶ!!〜


賛否両論なく、「否」ばかりなのに、
ここのところ、立て続けに、『粋』をアップしている。

……これには、理由がある。

僕自身が、この文章が好きなのだ(笑)。

ネットで読むには、読みづらいことは
承知だけれど、どうかご辛抱のほどを!


この、第7回は、かつて、男子少年の心を
わしづかみにした「野球盤」がテーマ。

2、3日前の日刊スポーツには、
今度、新たに最新版が発売されると出ていた。

さて、この回は、バカでかい野球盤を持って、
深夜の呑み屋を回って、みんなで遊んだり、
夜中の新宿コマ劇場前の広場で、
見ず知らずの人と遊んだり……。

バカバカしいけど、楽しかったなぁ……。


01.05





第七回
古き良きアナログの時代を考える
「野球盤」でひたすら遊ぶ!!

冬来たりなば、春遠からじ。
春の訪れとともに「球春」、プロ野球シーズンの到来だ!
読売の横暴は今に始まったことじゃないが、また今年も
好き勝手にやるのだろう。まぁ、いい。好きにすればいい。
オレはオレなりに今年も野球を楽しんでやる。
そこで、今回は、古き良き、しかし、今も脈々と続く、
野球ゲームの王様、エポック社の「野球盤」を通じて、
昔のゲームの魅力を探ってみる。ハイテクゲームにはない
アナログの魅力がオマエらを虜にすることだろう。



シーン一 ある日曜日・新宿伊勢丹玩具売場

とある日曜の昼下がり。場所は新宿伊勢丹、玩具売場。
小さい子供を連れた若い夫婦やプレステ2のデモプレイを
食い入るように見ている小学生たちでにぎわっている。

そこにオレは一人で立っている。

ショーケースの一番高い所に聳え立つのは
「フルオート野球盤PRO」。

言わずもがな、だが言ってしまうが、
あの少年の日の憧れの一品、必ずクラスの誰かが持っていた、
エポック社の「野球盤」の最新モデルだ! 

思えば、小学生の頃。
野球盤遊びと言えば、少年のたしなみの一つ、
男の通過儀礼の一つ、放課後の遊びの王様だった。

雨のため外で野球ができない時、
まだ女にも興味がない少年にとって、
野球盤を通じての、プロ野球シミュレーションは
生活の一部であり、人生の大部分だった。

買うか買うまいか。オレは思案していた。
目の前のその一品は、かつてオレが持っていた
それとは異なり、異常に大きな代物だった。

たった一人で、いい年をして、50センチ四方のそのブツに、
魅入られている姿は異様だっただろう。でも、仕方ない。
「野球盤」にはそれだけの魅力があるのだ。

そして、オレは買った。

83年に「ファミリーコンピュータ」が発売されるまで、
少年にとっておもちゃ界のMVPだった
「野球盤」をとことん楽しもう。

「フルオートってどんな機能だろう!」と
ワクワクしている自分に気がついた。

興奮を隠し切れず、編集部に「ブツ」を運ぶ。
校了直前の殺気立った編集部でのんきに包みを開ける。

30代の「おっさん」が多い編集部。
それぞれの少年時代を思い起こしたのか、
吸い寄せられるように「ブツ」に群がり
各々の「オレと野球盤」談義が始まる。

さっそくプレイをしてみる。
????????????????

プレイしているオレも、
それを見ているギャラリーにも「?」が頭を占める。

「何かが違う……」

H編集長がつぶやく。確かに何かが違う。
以前プレイしたときのようなドキドキがない。
トキメキがない。スリルがない。サスペンスがない。
あぁ、ロマンスもない!

これが、大人になるということなのか?
でも、確かに何かが違う。よし、昔の「野球盤」をゲットして
その「何か」の正体を確かめよう。
今回のクエストのテーマが決まった。


シーン二 深夜二時・東京中野/自宅パソコン前

昔の物を探すには、ネットオークションに限る。
4月号の「ネットオークション活用術」を熟読。
そして、検索の結果、「野球盤・デッドストック、美品!」と
「松坂大輔の野球盤」というのにヒット。

初めてのオークションに少々とまどったものの、無事に入札。
数日後、落札。届くのをワクワク待つ。

昭和50年代の野球盤が本当にデッドストックで
残っているのだろうか、松坂の野球盤とは何か?

不安と期待の入り混じった数日間。こんな気持ちも悪くない。

そして、ついに最初の「ブツ」が届いた!

じらされた分、思いは募る。あせるように梱包をほどく。
目の前に現れる「松坂の野球盤」。
しかし、これは直径15センチほどの超小型版。
オレの求めている「ブツ」とは大きく異なる。
パッケージに描かれている松坂の爽やかな笑顔とは裏腹に
オレはちょっとオチた。
思い通りにいかないこともままある、それが人生だ。

そして、さらに数日後。ついに、ブツが届く。

梱包は40センチ四方。オレの描いている野球盤像そのものだ。
恐る恐るダンボールから取り出す。
エアパッキン越しに見える、スタジアムの写真。
そして、「野球盤」の文字。胸の鼓動が高まる。
さあ、いよいよご対面。そして、ご開帳。
ついに現れた「デッドストックの美品」。

「オオーッ!」
一人で声を出す。まさに、美品。
袋はそのまま、すべてが未開封のまま保存されている。
まさに、21世紀の奇跡!
20世紀の「少年文化遺産」がこんなに状態良好で
完全に保存されているとは! 
その瞬間のオレは「神の手」と言われた
考古学教授の発掘瞬間よりもずっと興奮していた。


シーン三 深夜三時・新宿歌舞伎町コマ劇場前

その日、オレは酔っていた。かなりの酩酊状態。
しかし、悪い酔いではない。
むしろ、気持ちのいい酔い方だった。

オレの小脇には東急ハンズの大きな手提げ袋。
中身は、そう、「美品」。
オレはこの日、新宿のなじみの店に数軒出向き、
行く先々で、「深夜の熱闘甲子園新宿予選」を闘ってきた。

オレを含め「遅れてきた高校球児たち」は一様に興奮し、
大声を出し、みな、満足気に家路についた。

オレもそろそろ家に帰るかと、一緒に飲んでいた友人と、
コマ劇場の辺りをフラフラしていたときだった。

時刻は午前三時。
春先とはいえ、まだまだこの時間は冷え込む。
コマ劇広場には人だかりができ、
ウワサの「殴られ屋」(金をもらい、ひたすら殴られ続ける商売)が
ボコボコ殴られている。

オレは友達に言った。
「ここで、もうひと勝負やるか?」
「よし、ちょっと待ってろ!」

言うや否や友人は走り出す。そして3分後。
手にはエビスの缶ビールが二本。さすが、新宿だ。
この時間でも簡単にビールが手に入る。

そして「殴られ屋」の観客たちを尻目に試合を開始した。

ヤツが読売、オレがヤクルト。
先発石井一の乱調がたたって、
初回江藤の3ランなどで5点を先制される。

その裏、工藤の出鼻をくじき、
ペタジーニ、ラミレスの連続タイムリーなどで6点奪取。

1回終了時点で6−5。

ちょうどその時、オヤジに声をかけられた。
「楽しそうだね」。楽しいっすよ。

プレイ再開。すると、続いてホスト風の若いお兄ちゃんが登場。
「懐かしいっすね」。うん、懐かしいだろ。

プレイ再開。さらに、中国人が
「面白そうだね」。うん、面白いよ。

気づくと人だかりができていた。
その夜、野球盤のトリコになった男たちは10数人にのぼった。


ラストシーン 初春午後二時・神宮右翼席

オープン戦が繰り広げられる三月の神宮球場。
ライト席最上段でオレはビールを飲む。
ガラガラの応援席に野球盤を広げながら。
オレは、ぼんやり、ここ数日のことを考える。

「なぜ、最新版はつまらないのか?」
「どうして、あれだけの人数が
年がいもなく無邪気に興奮するのか?」
「プレステ2の劇空間プロ野球はよくできているが、
野球盤の方が魅力的なのはなぜか?」

つらつらと考えているうちに、いくつかのことに気づいた。

最新版の最大のウリ「フルオート」は便利な機能である。
が、投げるのも打つのもフルオートなため、
プレイが単調になる。一方、昔のタイプはいちいち
「投球装置」に球を補填しながらプレイしなければならない。

一球投げては球を戻す。一球打っては球を入れる。
一球、一球に間がある。

その間に「さぁ、次は四番だ!」とか
「アブねぇ。でもこれで、ツーアウト」
なんて会話のやり取りがある。この会話は意外と楽しかった。

あるバーでプレイしたときは、ギャラリーの一人が
「さぁ、ツーアウト満塁。バッターは清原。
ピッチャーロッテの黒木。ふりかぶって第一球を……」なんて、
わざわざ実況中継までしてくれた。
それもやっぱり「間」があればこそだった。

今回、こんなこともあった。
いろいろな人とプレイをしたが、みんなそれぞれの
「ローカルルール」とでも言うべき、独特のルールを持っていた。

例えば、「消える魔球は一イニング3球まで」、
「消える魔球を当てたら無条件でヒット」などなど。

他にも「人形の背中に自分の好きな選手の背番号を書いた」り、
「メンバー表やスコア表を手書きで作ってみた」り、
いろいろな楽しみ方をしていた。
自分たちで好きにアレンジできる、そんなルーズさがいい。

こんな遊び方は、今のゲームにはない楽しみ方だ。
ファミコン直撃世代でもあるオレだが、
かつてこんな遊び方に夢中になっていたことを
すっかり忘れてしまっていた。

粋とは自由の中にあり。
さぁ、来月もさらなる粋を求めるクエストにでるぞ。
グラウンドでは阪神期待の新人、
藤田太陽が苦戦を強いられていた。



今月のひとこと
三沢対小川に大興奮!
今、オレのプロレスリビドーは沸点に達している。3.2「ZERO−ONE」両国大会。メインイベント、それに続く、試合後の乱闘。三沢が小川に突っかかるなんて。三沢、秋山のノア勢、橋本、小川、藤田、さらに新日の永田。その裏に見え隠れする、猪木と長州の影。天国の馬場さんも見守っているはずだ。21世紀早々に勃発した「プロレススターウォーズ」。目を離すな! オレは失禁しても脱糞しても、一秒たりとも見逃さないぞ。


雪之丞華之介●「希望とは愛する二人が考える明日のことを言うのです」。昨日見た、つかこうへいの芝居のセリフ。いいこと言うなぁ。常に希望に溢れる30才。





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この記事へのコメント

1. Posted by JIROU   2007年07月06日 23:28
 お久しぶりです。先日は失礼しました。
 野球盤,懐かしいです。僕も小学生の時に持っていました。厳密に言うと2つ上の兄貴が持っていたのですが,記憶にある中では初期の野球盤は守備位置は決まっていて、消える魔球なんかもあったのではないですか?あと,裏技で指先で弾けば,超剛速球も投げれた思い出があります・・・
 僕が持っていたのは,王選手の野球盤だったかな?マグネット方式で守備なんかも自由に変えられた野球盤でした。
 野球盤はPCゲームと違って,動きがあり,マニュアル通りにいかない所が面白いと思います。
 「プロレススターウォーズ」は勿論,「プロレススーパースター列伝」より少し後にあった漫画のことですよね?これまた懐かしいです!
 今は,こちらも仕事もピークな感じですが,落ち着いたらまた連絡します。

PS:須藤元気選手のDVD予約しているのですが,まだこちらは届かないんですよ・・・
 



2. Posted by SHO   2007年07月07日 01:24
JIROUクンへ

こんばんは!
『プロレススターウォーズ』(笑)、
細かいところまで読んでくれて
どうもありがとう。

そうです「列伝」のあとに出た、
超荒唐無稽プロレスマンガです。

あのマンガは実に狂っていたなぁ。
馬場と猪木が、日本を救ってくれたり、
いろいろな建造物が爆発されたり。

とにかく不思議なマンガでした(笑)。

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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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