2007年07月04日

なぁ、“幸せ”って何だと思う……? 〜つかこうへい〜


夫と別れ、愛人と暮らす女性がいた。
その女性には、前夫との間に年頃の娘がいた。

そして、次第に愛人との生活の中で、娘が邪魔になった。

母親は愛人と共謀し、自分の娘に多額の保険金をかけた。

――そして、犯罪は行われた。

母親は、娘が風呂に入っているときに、
家に火をつけたのだった。

「年頃の娘だから、火事に気がついても、
 着替えるのに手間取って、
 確実に殺せると思ったから……」


母親は、逮捕後そう語った――。
そんな理由で、娘は逝った――。


……このとき、ここまで淡々と話していた、
つかこうへいの口調がガラリと変わった。


「せめて、首を絞めて殺せよ!」


いかにも、つかこうへいらしいレトリックだった。

絞殺するならば、苦しみにゆがむ娘の顔を
一生、記憶に抱えたまま、贖罪とともに生きていく、
そんな可能性もあるかもしれない。

けれども、「裸だと恥ずかしいはずだから」という
姑息な理由で娘を殺した母親が許せなかった。


「人は、そこまで鬼になれるのか?」


つかこうへいは、静かにつぶやいた。


つかこうへいの芝居は、常にハッピーエンドで終わる。
それは、彼自身が「人は幸せになるために生まれてきたのだ」
と考えているからだ。

しかし、今やそれも難しくなっている。

「幸せ」を引き立たせるための「悲しい」シーンが、
もはや「悲しみ」を通り越して、
「無惨な」シーンが必要な時代になっているという。


取材が終わって、近くの酒場に呑みに行った。
焼酎を呑みながら、つかこうへいは言った。


「オレには“幸せの形”が見えない……。
 なぁ、“幸せ”って何だと思う……?」



僕は、何も答えられず、ただ、
持っていたグラスを呑み干すことしかできなかった……。





shozf5 at 21:48│Comments(0)TrackBack(0) 忘れられぬインタビュー 

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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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