2007年06月28日

粋 第5回 〜三本立てで映画を楽しむ!〜

前日のこのブログで、『粋』と題する、
オチャラケコラムを掲載した。

……意外な反響があり、驚いた。

好意的なものばかりではなく、
「長すぎて読みづらい」という声がチラホラ。

でも、嫌がらせの意味も込めて、
本日も掲載します(笑)。

ここに書かれた体験、すっかり忘れていた。
でも、確かに、あの小柄なジイサンに、
僕はかなり感動したのだった……。


01.03




第5回

男の世界を深く濃く味わえ!

三本立てで映画を楽しむ!

「♪風は一人で吹いている、月は一人で照っている♪」
生まれてくるのも一人なら、死に行くときも一人なり。
男の生き方を、迷走しつつも探っていく「粋」第五回は
「三本立てで映画を楽しむ」だ。
「映画は映画館で観るものなんですね」、
とは故淀川長治先生のお言葉。含蓄のある言葉だ。
で、「イャぁ、映画って本当にいいもんですね」は水野晴郎の言葉、
そんなこたぁ、百も承知だ!!!!!!
でも、「シベ超2」が楽しそうなので許す。
今回は、都内に数少ない三本立て映画館に足を運ぼう!



タバコは吸っても携帯はマナーモードだった!

新宿昭和館。
その名を耳にしたことはあるか?
ある一定以上の世代にとってはたまらなく郷愁を覚える映画館らしい。
文太兄ィのヤクザ映画、健さんの任侠映画をとことん上映し、
たとえ、映画産業が斜陽化しようとも、
いつの時代も「漢の映画」を流し続ける「粋」な映画館だという。

ウワサには聞いていたが、オレは「粋」をめざすと
大言を吐きながらも一度も行ったことがなかった。
そんなフニャチン野郎からの脱却をめざして、
とある平日の昼間、新宿は南口の昭和館へ向かう。

本日のラインナップは松田優作主演モノほか、当然の三本立て。
雰囲気のいい、切符売り場のおばちゃんと
もぎりのおばちゃんに好印象を持ちつつ館内に入る。

1階の扉を開けた。
男性率100%。女率0%。
客入りは40%程度か。入り口には
定員471名とあったから、200名弱か?

そんなことはないや、50人程度しかいない。
繰り返すが、全員男だ。
期せずして女人禁制地帯に踏み込んでしまったオレは、
多少後ずさりしつつ、中を探検する。

すると、スクリーンの脇に、「場内禁煙」とある。
ここまでは、よくあること。
つづけて、「喫煙の場合は2万円の罰金」とある。
こんなに具体的な注意書きは初めて見た。

小指欠損率が高いエリア、
そんな当初の思い込みとは違ったが、
でも、決してカタギには見えない微妙な男たち。

くどいが、女の姿はない。館内に響くムード歌謡。
「夜の銀狐」だったっけか?
タイトルはわからないが、聞いたことのある曲だった。

場内が暗転。
映写機がカタカタと音を立て始める。
開始早々のことだった。
オレの三列ほど前に座る、ごま塩角刈りのオヤジが
おもむろにタバコをとりだす。
そして、何の躊躇もなく火をつける。

シュボッ……

ライターの音とともに、真っ赤に燃え上がるタバコの先。
暗闇に浮かぶ「禁煙」の文字。立ち上る紫煙。

そして、さらに、後ろから聞こえる、
「シュボッ」という音。
はるか前方に見える蛍のように光るタバコ。

50人も入っていない映画館で
10人近くがタバコを吸っている、シュールな映画館……。


男はいくつになっても、成長しつづける生き物なんだ!

オレの前の席の、部長風オヤジが挙動不審だった。
ライターの、あるいはマッチの音が館内に響くたび、
いちいち、音の方向に体ごと向き、
タバコを吸っているヤツの顔を確認し、
またスクリーンに向き直る、それの繰り返しだった。

「このオヤジ、よっぽどタバコの煙が嫌いなのか?」
タバコを吸っているオヤジに対して、
あからさまにイヤな顔をし、暗闇の中、
無言でプレッシャーを送っているのだ、とオレは思っていた。

しかし、事実は違った。
オヤジがコートのポケットをゴソゴソまさぐり、
取り出したのは紛れもなくジッポーのライターだった。

この部長風オヤジ、自分も吸いたかったのだ。
で、吸おうか、吸うまいか、悩んでいたのだ。

「タバコは吸いたい。場内は禁煙。
でも、みんな吸ってるじゃないか。
イヤ、みんな吸えば吸ってもいいのか?
みんなが何か盗んだら、
オレもドロボーになってもいいってことはないぞ。
そうだ、人の道は外すな、
これまでもそうやって生きてきたじゃないか。
いや、でも、ここで吸うからこそ、うまそうだしな。
あのオヤジうまそうに吸いやがって。
ああ、オレもあのオヤジのように
がさつな人間だったらよかったのに。
なんて小心者なんだ、オレのバカ!
あぁぁぁぁぁぁぁ……、吸いたい…」

こんな葛藤で苦しんでいたのだ。

そして、決心のときは来た!
オヤジは静かにタバコを取り出す。ハイライトだった。
そして、堂々とスクリーンを見据え、
実に優雅にタバコに火をつけた。

シュボッ!!

部長風オヤジが大きな壁を乗り越えた瞬間だった。
男はいくつになっても成長できるのだ。


ずっとオレの真後ろに立っていたあの男は?

部長風オヤジの成長を目の当たりにし、
いい気分で昭和館を後にする。
目ざすはすぐ近くの「新宿国際名画座」。
ポルノ映画の三本立てだ。

地下に下り、券売機でチケットを買う。
券売機には注意書き。

「ホモ、女装の方お断り」

やっぱりそうなのか……
話は数週間前にさかのぼる。
都内の三本立て映画館の話をしていたときのことだ。
友人曰く、

「新宿の南口にピンク映画館があるじゃん。
そこ行けよ、そこ。そこってハッテン場だし、面白そうだろ」

ホモの人が男をナンパする場だというのだ。
女の裸を見にきて、ホモについて行くヤツなんているのか?
という疑問は残るが、そのことが頭に残っていたので、
ちょっとビビった。友人曰く、館内のいちばん後ろに立ち、
どんなに席が空いていても決して座らず、
獲物を物色するのだという。不安な心持ちのまま、扉を開いた。

普通の映画館と明らかに異なるのが、座席の間隔。
浅く腰掛けて、思いっきり足を伸ばしても前の座席に届かなかった。
これって、チンコをいじりやすくするためなのか?
謎は残るが、答えを確かめる術はない。

1本60分の3本立て。入場料は1800円。
1本当たり、600円。AV借りた方が全然安いな。

映画を見る。

明らかにAVとは違い、決して駅弁も顔射もないが、
激しさを越えたいやらしさが印象的だ。

しかし、それよりも気になるのは
後ろの壁にもたれかかっている男。

もう映画どころではない。
トイレに行きたいのもガマンして観た。
正直言って、あまり覚えていない。
ただ、じっと、その男が過ぎるのを待った。

そして、3本目の途中、トイレをガマンできなくなった
オレは逃げるようにここを後にした。


今月の粋人は寒風の中、30分も立ちつづけていた

数日後、再び新宿昭和館に足を運ぶ。
先日のポルノ映画館の謎は何ひとつ解けていないが
ちょっと勘弁してくれ。貞操を守りたい。

で、また、昭和館だ。
この日は「仁義なき戦い」が上映される。
あの「バトルロワイアル」の深作監督の超代表作だ。

この「仁義」シリーズのときは盛況で
映画に合わせて昭和館内に掛け声まで
とぶらしいというウワサを聞いた。その熱さを感じたい!

入り口で時間を見るとあと30分ある。
初めから見たかったので、
近くの茶店で時間を潰すことにした。

で、待つこと20分。再び昭和館へ。
先ほど、オレが開始時間をチェックしているときに、
外の看板を丹念に眺めているジイサンがいたのだが、
そのジイサン、まだそこにいる。

次週上映、次々週上映のポスターまで
じっくりと執拗に見つめている。

「映画、好きなんですか?」
「はい」

ジイサンは人のよさそうな笑顔で答えた。
身長は150センチ程度しかなく、
きっと戦争時代、体が悪くて徴兵を免れている、
そんな弱々しい印象のジイサンだった。

「やっぱり、仁義なきシリーズが好きなんですか?」
「“仁義”もいいね。広能(注・主人公の名)は男だね。
でも、“健さん”もいいし、“力くん”もいいよな」

「力くん?」
「これこれ」

ジイサンが指し示したのは、Vシネマの帝王「竹内力」だった。
このジイサン、なかなかやる。
もっと話をしたかったのだが、もう「仁義」が始まる時間だ。
開始を告げるブザーがけたたましく鳴っている。

「もう、始まりますよ。入ったほうがいいんじゃないですか?」
次のひと言にオレはビビった。
「いいよ。もう何度も見てるから」

しかし、ジイサン。
あんた、何度も見て、改めて見直す必要がない映画のポスターを
少なくとも30分は寒風の中、見ているじゃないか?

オレは後ろ髪引かれる思いで館内に入った。
上映終了後ジイサンの姿はなかった。
粋の道は長い。さらに精進せねば!



今月のひと言
来年の成人式の話をしたい!
いきなり本題に入る。あえて、来年の話をする。2002年、新成人を迎える読者に言いたい。イヤなら成人式には行くな。成人式は決して楽しいものじゃないし、強制参加でもない。でも、あえて成人式に行くのならば、そこでこそ、「粋人」の心意気を見せろ。つまらないものでもじっと耐える。オンとオフ、ハレとケ。その場の雰囲気をつかめる大人になれ。それがリアル粋人というものだ。橋本知事、あんたは粋人だ!


雪之丞華之介●新日にはもはや「ストロングスタイル」はないのか? 新年早々、大問題をつきつけられてしまって、悶々とする30才。






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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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