2007年06月26日

粋 第4回 〜「江戸」が息づく、浅草を散策する〜

修理に出していたパソコンが戻ってきた。
改めて、原稿などのデータを移し替える。


……古い原稿が出てきた。


僕がまだ、編集者時代に書いていた連載原稿。

タイトルは『粋』

ペンネームは、学生時代から使っていた、雪之丞華之介


当時担当していた若者向け雑誌(10代から20代前半男子)で、
30歳を迎えた僕が、「威張り散らしつつ、無粋な自分を変えていく」
というコンセプトで始まったこの連載。

人称は「僕」ではなく、「オレ」。

自分はこんな文章を書いていたんだな、と
新鮮な気持ちを抱いたものの、
何のことはない、このブログはまんまこの文体だった。


当時のH編集長の発案で始まり、
その後も、「ただH編集長だけが喜んでくれるから」
という理由だけで、実に1年半ほど書き続けた。

連載すべては残っていないけれど、
その一部は残っていたので、ここに採録したい。
(文章、長くてゴメンナサイ・笑)


01.02




第4回

「東京」じゃ、ねえぞ、「江戸」だ、「江戸」!

「江戸」が息づく、浅草を散策する

「粋」を目ざして日々精進しているつもりのオレだが、
道はまだまだ長く険しい。オマエたちも頑張っているか?
さて、リアルシティボーイを目ざすためには、
まがい物じゃない、本当の東京を知らねばならない。
そこで、今回の「粋」は、華のお江戸は大東京、
粋な男は浅草をめざす! ということで浅草探訪だ。
正直言って、オレは浅草をよく知らない。
が、あの偉大なるレスラー「三沢光晴」も愛する街、
浅草を極める旅に一緒に出かけようじゃないか!!!



食って呑んで落語見て。編集長ゴメンナサイ!

東京に憧れ、東京を極めようと頑張っている読者諸君。
シティボーイを気取るのはいいが、真の伊達者、
リアルシティボーイをめざすなら、まずは、浅草を極めよ!
これはアドバイスではない! 命令だ! 

「浅草こそ江戸の華」
「江戸の心は粋にあり」

この格言を知ってるか? 知らないだろ。オレが今、作った言葉だ。
江戸時代、江戸の男たちは、そろって、粋を極めようとしていた。
そんな男たちのスピリットを今こそ、見直せ!
今の、東京でもっとも「江戸」を感じさせる街、それは浅草だ。

昔、カブキロックス(知ってるか?)が
ジュリーの名曲『TOKIO』をカバーした『OEDO(お江戸)』は、
いただけなかったが、そんなことは関係ない。

とにかく、華のお江戸を極めるために、
今回は「粋」を求めて浅草をさまよう。

まずは浅草寺を参拝。基本だ。厳かな気持ちでスタートだ。

そして、景気づけに一杯。創業明治13年。神谷バー。
客席はかなり埋まっていた。午前中だったが、
みんな「デンキブラン」を呑んでいる。
明治初期、西洋の洒落たものを「電気○○」と呼ぶ習慣があったころ
のなごりで、ブランデーベースのカクテルだ。価格は260円。

初めて飲んだが、安くて呑みやすい。
アルコール度は30度とちょっと強い。
で、気づくとみんなデンキブランとビールを一緒に呑んでいる。
どうやら、これが通の呑み方らしい。勉強になった。

で、前々回のこの連載でも行った「浅草演芸ホール」落語を見る。
平日だったが、客入りはまずまず、さすが笑いのメッカ浅草だ。
ビールを呑みながら、見るのもオツなもんだ、のり巻きもうまかった。

このままでは、取材にならないと、焦りつつ、
午後八時ホールを途中で後にした。

そして、向かったのは、牛鍋の専門店、「米久本店」。
「すき焼き」と呼ばずに「牛鍋」と呼ぶのもいい感じ。
3800円のちょっと豪勢なディナー。
霜降り和牛の底力を見せつけられた。
こんなにうまくてどうしよう、うれしい悩みだったが、ハプニングがあった。

周りの客がどんどん減り始め、定員も後片付け。21時閉店だったのだ。
ビールと和牛の絶妙のハーモニーを途中で邪魔されたが、
これだけうまけりゃ仕方ないか。よし、神谷バーに戻って呑み直し。
バーに向かう、閉まってた。
21時30分ラストオーダー。あぁ、夜の早い街、浅草。


修業とは出直しの連続である(猪木の受け売り)

これじゃあ、イカンと、後日浅草に出向いた。
まず、向かったのが浅草が生んだ「世界の北野」こと、
ビートたけしの修業時代に住んでいたアパート。

言問通りをちょっと入った所にある、そのアパート。
聞けば、当時の面影を残したままだという。
あの天才の若かりし修業の日々を思い、気分を新たに取材する。

先日は、ここで、デンキブランを呑んで
いい塩梅になってしまった反省があるので、酒は呑まずに次をめざす。

時間はまだ十二時。昼食を摂る。店は「浅草今半」。
ここで牛丼を食べる。牛丼と言っても、
上場したぐらいで浮かれてる吉野家の牛丼なんかと一緒にするなよ。

ここも、和牛専門店の老舗だ。
一口食べて、吉野家の二百倍、松屋の百倍うまいと、瞬時にわかった。

オレは迷わず、ビールを頼む。

生きてるってすばらしい!
人生で心からそう思える瞬間って、あんまりないと思うが、
その時のオレはまさに、そんな心境だった。

店を後にしてフラフラ浅草寺に向かって仲見世を歩く。
途中、韓国人の観光客集団とすれ違う。
地図を見ながら何やら迷っている。
オレは迷わず近づき、自慢の韓国語で案内をしてやった。

あまり伝わらなかったようだが、
オレのロレツが回っていないのか、相手の耳が悪いのか、
オレの流暢な韓国語はあまり意味をなさなかった。
だが、そんなことはケンチャナヨ。

自分が幸せな気分だと人にも優しくなれる。
仲見世を途中で左に折れて、
六区ブロードウェイに向かってフラフラ歩いた。

目ざすは伝説の遊園地。
ジェットコースターが壊れかけてて怖い、とか平日の客は20人ぐらいだ、
とか数々の都市伝説を持つ花やしきだ!


平日の花やしき。客は12人だった(目測)

さあ、花やしきだ。
江戸時代の嘉永6年(1853年)開園という
150年近い歴史のある遊園地だ。

平日の昼、オレは一人だった。
「一人で遊園地」、寂しいよな。
でも、その寂しさを乗り越えてこそ、真の「粋人」にたどりつけるのだ、
そう信じてゲートをくぐる。

くぐって驚いた。客がいない。誇張じゃない、ホントに誰もいない。
「休みか?」
いや、今、確かにチケットを買って、
受付のお姉さんに半券をもらったばかりだ。休みのはずはない。

不安な心持のまま、園内を歩く。人影が見える。
十代のカップルだった。デートでここに来るとは、
なかなか粋なカップルだ。
少しうれしくなって、オレはアトラクションを次々と制覇していった。

自慢の日本最古のローラーコースターにも乗った。当然、貸切だ。

一人で乗るジェットコースターもいいもんだ、と思ったが、
もし、ここで事故にあったら、

「不幸中の幸い・死者1名 平日でよかった(関係者談)」

なんて、報道されたらどうしよう、と不吉な考えがよぎる。
死ぬのは仕方ないが、「一人で花やしきに来てた」ことを知った
知人はオレのことを何て思うだろう。

コースター好きのオレもさすがに寂しくなった。
こんなにせつないコースターは初めてだ。

すると、オレと入れ違いで、若い男が乗り込んでいく。
その男、年のころ、27、28。ナップザックを肩にかけ、
薄いベージュのジャケットを着ている。

彼も一人だった。しかし、何しろ、狭い園内。
どこに行っても彼に出くわす。
お互い、何となく意識をし始めるのがわかる。

まるで、恋愛の初期症状のようだ。
オレは何となく気まずく、彼を避けるように園内を散策した。


なんと「粋人」はまさに、その男だった!

午後三時。場所はフラワーステージ。
「花やしき一座の仲間たちのゲーム大会」、
観客は一人。舞台には若手芸人が二人。演者の方が多い状況。

もちろん、その観客こそが「彼」だった!
一人でショーを見る、そんな勇気はオレにはない。
オレはステージを見渡せる高台からそのステージと彼を見た。

見る方も辛いだろうが、やる方はもっと辛いはずだ。
もし、「彼」さえいなければ、この公演は中止になったかもしれない。
が、客がいる限りイベントは続けられる。

しかし、強制参加でもないのに、
どうしてそこに平然と座りつづけられる?彼よ。

ジャンケン大会が始まる。

大会も何もあったもんじゃないが、芸人は客席まで降りてきて、
彼と二人でジャンケンを始める。

「ジャンケン、ポン!」

 ステージに残ったコンビの片割れの大声が
スピーカーからむなしく響く。彼が負けた。

 一瞬の静寂。そして、芸人が叫ぶ。

「さあ、次は準決勝!」

????????

今のは準々決勝だったのか?
また、ジャンケンが始まる。彼はまた負けた。

「さぁ、いよいよ決勝戦!」

この行方がどうなるのか、高台で一人、オレはドキドキしていた。

「ジャンケン、ポォンッッ!」

彼が勝った! 安堵する芸人、そしてオレ。

「おめでとうございます!優勝です! さァ、賞品です」

彼は風船をもらい、そして、優勝者インタビュー。

「どうもありがとうございました」

誰に向かってしゃべっているのか? しかも1勝2敗で……。

数十分後園内を後にしようと出口に向かうと彼がいた。
オレはちょっと悩んだが、彼に声をかけた。

「寒いっすね」
「そうっすね」

オレたちに言葉はいらなかった。
彼こそ、「孤独」と立ち向かえる真の勇気ある者、「粋人」だった。
オレもまだまだ甘かった。来月も「粋」を目ざして頑張ろう!



今月のひと言
人は歩みを止めた時に、そして、挑戦をあきらめた時に、年老いていく。時間は短い。真剣に悩んでいることでも、ある人にとってはどうってことねぇ、ことだったりする。あせるな怒るなあわてるな。そんなことを考える今日この頃。2001年を迎え、オマエたちも頑張っているだろう。オレも頑張る、オマエらも頑張れ。それが、メッセージだ。さて、この連載への意見、感想を待つ、迷わず行けよだ。また、来月!


雪之丞華之介●新宿のなじみのバーが立て続けに2軒なくなった。数々の思い出をありがとう、と感傷的になっている30才。今年は新しい店を探す年か?








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この記事へのコメント

1. Posted by H(笑)   2007年06月29日 17:17
いゃあ、懐かしいねぇ。
この浅草の回も傑作だけど、野球盤の回が僕の中の一番っす。

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PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


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