2007年05月29日

これは、60'sじゃないだろ…… 〜台湾3日目・その3〜


龍山寺から戻って、その顛末をブログに書いて、
それから、午前中にチェックしておいた、
階下のバー、「60'sバー」で、軽く呑むことにした。

開店前の店先に掲げられていた英文の説明を読むと、
「一流のバンドによる本物の60年代ジャズを聞かせる!」
と書かれていたので、大いに期待して店に入る。

薄暗い店には、中国語を話すカップルと
西洋系の4人組がすでに呑んでいた。

確かに、店内にはピアノによる切ないメロディーが流れている。
題名は知らないけれど、僕でも聞いたことのある
スタンダードな曲だった。

僕は、新刊のゲラを持参して、
改めてクライマックスシーンを読み直していた。

自分の書いたものだけれど、少しずつ、
物語の世界に入っているうちに、
いつの間にか、客は僕一人だけになっていたようだった。


さらに続きを読み進めているうちに、
突然、曲調が変わった。

ピアノを弾いている男性が、歌を歌いだす。
マイクの調子が悪く、定かには聞き取れないけれど、


「赤坂……、涙に暮れる……、それでもいいの……」


と日本語で歌っているようだ。

ミラーボールがきらめく店内で、
その歌声は、まるでムーディー勝山そのままだったけれど、
確かに、これも「60's」と言えるのだろう。

気にせずに、ゲラを読み進める。

すると、今度は、


「上を向ぅいて、歩こう……」


と確かに聞こえた。

どうやら、客が僕だけになったことで、
日本語の曲を演奏してくれているらしい。


その心遣いはうれしかったけれど、
なまじ「日本語」になったことで、
微妙な発音の訛りや、歌詞の間違いなど、
細かいところが気になり始めて、
ゲラに集中できなくなってしまった。


「まぁ、いいや……」


気を取り直して、「呑む」ことだけに意識を
集中すると、次第にこの演奏が楽しくなってくる。

他に客はいない。
言ってみれば、僕のためだけの個人リサイタルだ。

次々と、日本の歌が演奏される。


――しかし。


演じられる曲が、ラッツ&スターになり、
安全地帯になり、やがてチェッカーズになると、
次第に、僕の頭に「?」が渦巻き始める。


「どう考えても、60'sじゃないだろ……」


けれども、酔っていたこともあるけれど、
『ジュリアに傷心』を口ずさんでいるうちに、
僕は60'sだろうと、80'sだろうとどうでもよくなってしまった。


なおも、いい感じで演奏は続いている。

……こうして、台湾の3日目は更けていくのでありました……。













トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
PROFILE
SHOICHI HASEGAWA 
1970年5月13日・東京生まれ。
ノンフィクション・ライター
日々、旅をして、人に出会い、
話を聞き、それを文章にする。
そんな日々の雑感です。
長文になると思います。

ちなみに、上の写真は、
モハメド・アリ@北朝鮮です!
(07年3月1日付参照のこと・笑)
shozf5@gmail.com


長谷川晶一著作物
Recent Comments
楽天市場